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銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第二百五十五話 人を突き動かすもの
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人としては何処かおかしいのだろうな……」
「……」

確かに義父の言う事は理解できる。十万隻以上の軍が戦う中で二千隻の損失と言われてもそれほど痛みは感じないだろう。損失率は全体の二パーセントにすぎない。だが現実には十万人以上が死んでいる事になる。人としては何処かおかしいと言わざるを得ない……。

「軍人と言うのは人を殺す、人を殺させる。以前は気付かなかったが何処か普通では無いのだろう、軍を辞めてそう思うようになった。振り返って見ると随分と人を殺したし死なせてしまった、そう思わざるを得ん。……罪深い事だ……」
「義父上……」
「お養父様……」
義父が俺を見た、苦笑を浮かべている。

「現役の司令長官であるお前の前で言う事では無かったかな」
「いえ、望んだのは私です」
「……まあ、お前なら無駄な犠牲者を出す事はあるまい」
「十分に気を付けようと思います。貴重な御話し、有難うございます」
「うむ」

少しの間沈黙が有った。気まずいな、そう思った時、TV電話の受信音が鳴る。救われるような思いで席を立ち番号を確認するとフェルナーからだった。例の件だろう、良い所で連絡をくれるじゃないか。流石、我が友だな。保留状態にしてから義父に断り通信室へ向かった。

部屋に入りTV電話の受信ボタンを押下するとフェルナーの姿が映った。
「待たせたかな」
『いや、そうでもない。話せるのか』
「丁度良い所だったよ、助かった」
俺の言葉にフェルナーが興味津津と言った表情をした。

『喧嘩でもしたのか』
「そうじゃない、そうじゃないけど気まずい時は有る」
『ほう、意味深だな、それは』
「それより話を聞こうか、どうだった」
フェルナーがちょっと残念そうな表情をした。多分俺とユスティーナが喧嘩でもしたと思っているんだろう。

『ボイムラー准将から連絡が有った。例の諜報員だが先程、地球教徒と接触したそうだ』
「間違いないのかな」
『間違いない、教団支部ではなく映画館で接触したそうだ。なかなか古典的だろう』
フェルナーが皮肉に溢れた笑みを見せている。

「仕方ないね。連中は古いものに愛着を持っている、昔ながらのやり方が好みなんだ」
フェルナーが声を上げて笑い出した。俺の事を酷い奴だ等と言っている。笑っているお前も同罪だろう。

「それで、他には」
『接触した地球教徒は大急ぎで教団支部に戻ったようだ。大分慌てていた様だな』
「……」
『その後、教団支部長のゴドウィン大主教も戻ってきた。一体何を話したのか、気になるところだ』

「つまり有罪、そういう事か……」
『そういう事だ』
フェルナーが頷いた。
「ボイムラー准将と六月九日の準備を進めて欲しい。気付かれるなよ、アントン」
『ああ、十分に注意する。待ち遠しいよ、
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