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星河の覇皇
プロローグ一
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元々コンピューター技術においても遅れていたこともあり彼等の宇宙進出は太平洋諸国の後塵を帰する形となた。かつてのEUの面影は何処にもなく欧州は再び人類世界の辺境に甘んじることになるかと思われた。
 だがそこで彼等に幸運が訪れる。新たな指導者の誕生である。
 ハインリッヒ=フォン=ブラウベルク。オーストリアに生まれた公爵家を先祖に持つこの男は欧州議会の第一野党である革新政党から欧州議会の議員に立候補した。引き締まった長身、豊かな金髪、青く強い光を放つ瞳、そしてギリシア彫刻のような美貌を持つ二十五歳のこの若者はその弁舌でも欧州の市民達を魅了した。
 彼は議会に入るとまず演説を行なった。歴史に名高い『復活祭の演説』である。この当時欧州議会は復活祭に開始されることとなっていた。当時の欧州の宗教はギリシアや北欧の神々が復権しカトリックと融合しているものが主流であったのだ。古の神々の復権は十九世紀には既に見られていたがそれが現実のものとなるのに更に数百年必要であったのだ。
 この演説は閉塞状況にあった欧州の人々を熱狂させた。革新政党のリーダー達もそれに賛同し彼は忽ちその政党の若きリーダーとなった。
 ブラウベルクはその政策を次々と発表させた。宇宙への積極的な進出、科学者及び技術者の保護、教育の再編成、労働者達の権利保護。そのいずれも宇宙進出に絡めたものであった。
 すぐに与党の中にも彼に賛同する勢力が現われた。彼等は党を出て野党に合流した。これにより議会における勢力関係は一変した。
 そして議会は解散となった。それに伴う選挙により革新政党は圧倒的な勝利を収めた。彼は欧州議会に欧州議会議長、すなわち欧州のリーダーに選ばれた。
 彼は自らの政策を通していった。これにより欧州はその力を取り戻した。そして欧州も宇宙に大きく進出することとなった。
 これを面白く思わない勢力もある。環太平洋諸国だ。とりわけアメリカ、中国、ロシアといった面々は不快に思った。
 まず刺客を送った。だがそれは失敗した。しかも彼等の行動が明るみにされた。三国の諜報機関は批判の嵐に曝されその名声は地に落ちた。
 これで暫く大人しくしていたがその間にも欧州の進出は活発になる。だが今のところは何も出来なかった。暗殺事件の発覚により失脚した対欧州強硬派に替わり太平洋議会の主流になった穏健派にとってもブラウベルクは意識しなくてはならない存在であったからだ。
 しかし経済制裁も効果が期待出来なかった。彼等は既に独自の経済基盤を持っていたからだ。資源も手にしていた。
 彼等はシンガポール条約をたてにすることにした。それにより宇宙進出のいい部分は独占することにした。戦争を売ろうにも先に手を出したのがこっちであるとわかった以上支持者も期待出来なかったからだ。しかも太平洋諸国は諸国で問題を抱えていた。
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