使徒大戦
第一章
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損失があったような……。
──喰われた?
その単語が頭に浮かんで、シンジは戦慄した。初号機とした契約が、いやがおうにも思い出される。
シンジは強く頭をふった。
それがどうだというのだ。自分には何もない。二人を救えるのならば、何を惜しむ必要があるだろうか。
槍は主人のもとへまだ戻っていない。シンジの勝機はそれが果たされるまでのわずかな時間、今しかないのだ。
シンジは初号機を突進させた。右のストレートをたたき込む。
しかし、それはあっさりと四号機にはらわれてしまった。力の方向を流され、引き込まれる。だが、それもシンジは予想していた。引かれる力に逆らわず、自ら踏み込んで速度を増し、さらに体をひねる。
すべての力をのせた渾身の左肘が四号機の顔面をとらえた。
「がッ!」
初めてカヲルの苦鳴が漏れる。四号機が硬直した。
「はぁッ!」
右足を強く踏み込む。背中から体当たり。シンジが夢中でした行動は、初号機に備わる膂力と重力の相互作用によって勁を産み、打撃力に変換される。
四号機が背中から水面に倒れた。
いまのうちに綾波とアスカを助けなければ。四号機よりも初号機の方がスピード、パワー、ともに優越しているようだが、シンジの技量とカヲルのそれとは差がありすぎて、機体の性能差では埋めきれないようだ。
シンジが単独で四号機に勝てる可能性は少ない。暴走し、初号機の本来の力を解放すれば分からないが、そうなってしまったらもう制御ができない。今の初号機が暴走したらシンジは飲み込まれ溶けるだけではすまず、魂まで喰われてしまうかもしれない。それではカヲルを倒しても、レイとアスカを救うことにはならないのだ。
ではこの絶望的な状況を打開する方法が無いかというとそうでもない。シンジには一つだけ可能性を感じていた。それは第六使徒会戦時のデュアルシンクロ──パイロット2名による同時シンクロである。
シンクロおよびフィードバックをシンジが、戦闘機動の操縦を格闘巧者のアスカが行うことができるならば、少なからぬ勝算がある。そのためにも、早急にアスカとレイを救出しなければならない。
熱源トレーサーをレーダーに重ねると、ヒトの体温に近い影が弐号機のほうに流れている。僥倖と言えるだろう。
弐号機に向かって走り出す。
『シンジっ!』
アスカの警告の声がプラグに響いた。とっさに四号機を振り向くと、いつのまにか手にした槍を投擲姿勢に入っていた。
シンジは戦慄した。槍の矛先が向いているのは自分ではなく、弐号機を狙っている!
四号機を突き飛ばしたことが徒になった。四号機と弐号機を結ぶ射線上からは、初号機は大きくはずれてしまっている。
「くそぉっ!」
とっさにATフィールドを身にまとい、
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