使徒大戦
第一章
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ると、レイは宙に浮かんだまま微笑んだ。安心したように。その笑顔はあのヤシマ作戦のときに見せた笑顔そのものだった。
恐怖は感じなかった。使徒だろうと、綾波は綾波だ、とシンジは本心から思った。自分もいまや人間のままではないのかもしれないし。そうだ、気にするほどのことではないのだ。
「綾波……よかった無事で。アスカも……」
シンジが安堵のため息をこぼしたのも、つかの間。
ふっ、とレイの笑顔が消え、深紅の瞳が閉じられる。
「!」
支えを急に失ったようにレイの体が落下をはじめる。とっさにのばした初号機の腕も届かず、レイの体はLCLの赤い水面に落下していく。華奢な制服姿が湖水に飲み込まれ、紅のミルククラウンが咲いた。
「綾波……あやなみぃっ!」
透過率の悪い水底を探ろうと、シンジは初号機をかがませようとした。しかし、それは果たせなかった。後から首に巻き付いた腕がそれを阻止したからだ。
「つれないね、ボクと遊んでいるときに他の女の心配かい?」
「カ、カヲル君っ!」
容赦なくスリーパーホールドが決まる。自らの気管が押さえられているような苦悶をシンジは感じた。だが、ここで落ちている暇はない。
「邪魔を……するなぁっ!」
思い切りエルボーを四号機のみぞおちあたりめがけて振り下ろす。同時に自らの後頭部を四号機にぶつける。分の悪すぎる相打ち狙いの攻撃は、シンジのこれまでの性格からすると意外だったため、カヲルはまともにくらってしまう。
四号機の腕がわずかにゆるんだのを見計らって、その腕をとり、腰を沈めて投げ飛ばした。
盛大な水飛沫が上がる。
「しまった……!」
水の中にはレイがいる。いまの衝撃がレイをさらに傷つけてしまったかもしれない。その可能性に顔を青ざめさせる。そして慌てて熱源センサーを作動させた。
「ボクを無視しないでおくれよ。つれないじゃないか!」
センサーに気をとられたシンジが気づかぬうちに、カヲルは槍を手にしていた。それを初号機に向けて投擲する。
シンジは初号機の掲げた右腕にATフィールドをまとい、それを受けようとした。しかし、とっさのことだったのでフィールドの収束が足りず、槍はフィールドを貫き初号機の腕を縦に裂いた。
「ぐぁううううっ!」
腕を縦に裂かれるという苦痛はそれほどではなかった。それを証明するように初号機はすぐに傷口を修復していく。
シンジが呻いたのは、傷の痛みではなく、修復の瞬間に自分の中から『なにか』が欠落した巨大な喪失感のためだった。
シンジは荒く息をついて呼吸を整えようとする。だが、体は言うことを聞かず、ぶるぶると震えていた。
──なんだろう、いまのは?
外傷ではない。胸の肺の傷さえも初号機の再起動から治癒されたようだ。しかし肉体ではない、もっと深いところになにか致命的な
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