第一章 無印編
第十話 『海鳴温泉(前編)』
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シホ・E・シュバインオーグ
なのは達より先にお風呂から出た私は広間で一人コーヒー牛乳を飲んでいる。
周りからなにやら視線を感じるが気にしない。
どうせ異国の人が珍しいというものがほとんどだろう。
おまけにコーヒー牛乳を飲んでいれば尚更だ。
「ふぅ…でもやっぱり私は少し涙もろくなったかもしれない。
それにすぐに心が揺らいでしまう…」
言葉に出すとさらにへこむ。
精神が幼くなってきていると同時に男性としての自覚も無くなって来ている事を実感し始めているし。
まぁ自己を形成する心象世界『剣の丘・無限の剣製』があるから別に構わないけど…そう、体は剣で出来ている。
これがある限り私は私という自我を保ち続けられる。
「はーい、おチビちゃん達」
…少し詩人の気分に浸っていたところで外の廊下から最近聞いたような声が聞こえてきた。
それで覗いてみるとなのは達がなにか知らない女性にからまれていた。
少し考えて、ふと髪の色や額の宝石を見た時に「ああ…」と思い至った。
だからしかたなく私が出て行くことにした。
そろそろアリサが暴発しそうだったから。
「なのは達、どうしたの…?」
「あっ!」
「ッ…!」
なのは達三人は私の声にすぐに振り向いた。
それと同時に女性が少し苦笑したのを私は見逃さなかった。
判明…この女性はアルフだ。
敵情視察かもしれないけどさすがに出すぎだろう?
「お姉さん、なのは達になにか用があるんですか…?」
「いや…ちょっと知り合いに似ていた子がいてね」
「あはは、そうだったんですかー」
私は少し演技のこもった笑みを浮かべた。
しかしおそらく目は笑っていないだろう。
多分今の私の顔は具体的に言うと、
『こんばんわー! みんな元気? わたしがいない間にシロウと仲良くしてる? え、してる? うんうん、良きかな良きかな。―――殺すわ。』
と、笑顔で言うイリヤみたいな表情になっているだろう。
………私は心の中でなにを言っているのだろう?
ともかくそれでアルフ(断定してはいないけど)はバツが悪そうにしているし、なのは達も少し怖がっている。
そう、今私はここら一帯に限定的に威圧感を発生させているから。
『ここで暴れるなら容赦はしない』という意思表示もこめて。
「ご、ごめんよ。別に悪気はなかったから…じゃあねー」
威圧に当てられたのかアルフは顔を蒼白にしながらこの場から離れていった。
それで私は威圧を悟られないように解くと、
「大丈夫だった? 変な事されていない…?」
「う、うん…」
「平気だけど…シホ、あんたって可愛い顔しているのにあんな怖い表情もできるのね」
「思わず私達もビクッと震えちゃったよね」
「ごめんね。でもあーいう人にはあれ
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