第一章 無印編
第十話 『海鳴温泉(前編)』
[2/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いる事がほぼ真実なだけに無言で俯くことしか出来なかった。
そしてリン達の助けがなければ私は当の昔に死人と化していただろう。
恭也さん達に迷惑をかけたくなかったのに少し話しただけでここまで心配してくれる…。
嬉しい、という思いとともに…同時にこうなるなら最初から素性などを話さずに隙を見て逃げ出せばよかったという思いも頭を過ぎる。
…この世界に来る前までの私ならまだ冷徹に振舞えていただろうに、今ではもうそれもうまくできない。
私は…いつからこれほど弱い人間になってしまったのだろう…?
少しの心遣いの言葉だけですぐに心が揺らぐ。
もうがらんどうではなく、確かに目指すものが心の中にあるというのに…ッ!
そう、もう『全てを救う正義の味方』にはなれないけど、だけどイリヤの願いの一つでもある『大切な者達を護れる正義の味方』という目標…。
そして、私にとっての幸せの探求…。
それらの様々な思考がグチャグチャになって上手くまとめられない…。
◆◇―――――――――◇◆
Side 高町恭也
…シホちゃんが俯いてしまい少ししてファリンさんの方に体を預けて気絶してしまった。
安心させようとしたけど、どうやら逆に精神的に追い込んでしまったらしい。
気づけばシホちゃんの目じりにはわずかだが光るものが見える。
「どうやらまだ自身の中で葛藤をしているのでしょう。
おそらく迷惑をかけたくないというところですね…。
まだお嬢様達と同い年くらいだというのに、シホお嬢様の世界の裏は非情なものだったのですね…」
「シホちゃん、シホちゃん…大丈夫ですよ? もうあなたを襲う人はいませんから…だから安心していいんですよ?」
ノエルさんがシホちゃんの頬をまるで硝子細工を触るように優しく撫でている。
そしてファリンさんが涙を流しながらシホちゃんをギュッと抱きしめてくれている。
そう…もうシホちゃんは一人じゃないんだぞ?
シホちゃんには俺達家族がついている。
だから、今は安心してお休み…。
◆◇―――――――――◇◆
Side 高町なのは
シホちゃん…どうしたんだろう。
途中のパーキングエリアでシホちゃんが車の中でファリンさんと一緒になって寝ていました。
お兄ちゃん達がいうには途中で疲れがたまっていたらしく寝てしまったんだろうと言っていたけどなにか隠しているみたいだった。
でも少ししてシホちゃんは起きたら、
「大丈夫よ、なのは。私は大丈夫…」
シホちゃんは笑顔を浮かべてそう言ってくれていたけど、やっぱり無理しているように見える。
やっぱり後でお兄ちゃんになにかあったか聞いてみよう!
◆◇―――――――――◇◆
そうして少しの不安が残る中で一同は海鳴温泉に到着した。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ