第二十一話 物量戦
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「うむ」
ヘルマットは男の言葉に頷いた。そうして指示を出した。
「全軍撤退せよ!」
指示を出してからの彼等の動きは速かった。瞬く間に戦場を離脱する。こうしてロンド=ベルはアクシズも守り抜いたのであった。そうした意味では勝利だった。
しかし。彼等の中にある疑念が沸き起こっていた。
「この撤退も」
「そうですね」
アズラエルはユウナの言葉に頷いていた。
「間違いないかと」
「やはり彼ですか」
ユウナは言った。
「まさかとは思いますが」
「決め付けはよくないですけれどね」
アズラエルはそれは注意する。しかし答えはどうしても一つしかなかったのだった。
「ですがそれでも」
「彼以外には有り得ませんね」
「はい」
ユウナの言葉に頷く。
「あの撤退の仕方もそうです」
「貴方達もそう思われるのですな」
ここでクサナギのモニターにリーが現われた。
「同じことを」
「貴方もそうなのですね」
「その通りです」
リーはアズラエルに答えた。
「それ以外は考えられないかと」
「正直まさかと思いますけれどね」
アズラエルは微妙に考える顔になっていた。
「それでも。あそこまで同じだと」
「そうです。私もあの男はよく知っていますので」
「それは軍でですね」
「はい」
ユウナの問いに答えた。
「貴方の先輩に当たるのでしたか」
「正直に申し上げまして嫌な男でした」
リーは顔を顰めさせて述べた。
「尊大でいつも上から人を見下す。そうした男でした」
「待て、リー」
テツヤは今のリーの言葉である男を思い出した。彼もまた、であった。
「そいつはまさか」
「そのまさかだ」
リーはそうテツヤに言葉を返した。
「これでわかったな」
「死んだ筈だ」
彼はすぐにそれを否定した。
「それがどうしてなんだ」
「それがわかるのもこれからでしょうね」
アズラエルはクールにこうテツヤに告げた。
「これからです、それもおそらく」
「おそらく」
「次に戦いには」
アズラエルは言った。
「自分から言って来るでしょう、本当に彼ならばね」
「おい、まさかそれは」
今度は忍がモニターに出て来た。そしてアズラエルに問う。
「あいつだっていうのかよ」
「その通りですよ。君も気付いていますよね」
「あったりめえだ」
忍の返事は決まっていた。
「あれは確実にあいつだ。あいつ以外にはねえ」
「さて、それなら色々と彼に聞きたいことがあります」
アズラエルは楽しそうに述べた。
「その時のことを楽しみにしておきますか」
「その前に潰してやるぜ」
忍の答えはこうであった。
「この俺の手でな。生きているのならよ」
「ええ、それは構いませんよ」
アズラエルは平気な顔で彼に告げた。
「どうぞ。そうして下さい」
「あんた、ま
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