アインクラッド 前編
亀裂は不安を呼んで
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「……せっ!」
マサキは振り下ろされた無骨な手斧を柳葉刀で右に払い、その隙に剣を返して右下から左上へと《ライトネス》で斬り上げる。斧で防御することが出来ない《ルインコボルト・トルーパー》がダメージで仰け反り、
「スイッチ!」
という掛け声と共にトウマがマサキの前に出た。手に持った黒の片手用直剣を思い切り振りかぶり、光芒を纏わせながらモンスターに叩きつける。ノックバックしていた《ルインコボルト・トルーパー》は何も出来ずにその体を淡い光に変え、耳をつんざくような破砕音とともに散らし、それと同時に、陽気なファンファーレが一帯を包んだ。もうすっかりと耳に慣れたレベルアップのサウンドエフェクトだ。
マサキは淡々とウインドウを操作し、ボーナスステータスを振り分けようとする。と、ここで、
「いよっし!!」
と、目の前でトウマが、レベルが1上がっただけにしては些か過大とも言えるガッツポーズを決めた。
(ああ、そういえば、これで“あれ”が解禁になるのか)
マサキはすぐさまその理由を見つけ、納得する。マサキは再びウインドウに視線を戻し、ステータスを割り振る。全てのステータスを敏捷値へと振り終えたマサキがウインドウを閉じると、そこには満面の笑みを湛えたトウマの顔があった。
「……顔が近い」
「別にいいだろ? ……ひょっとして、マサキって実はそっち系?」
「……で、何の用だ?」
「無視かよ。……まあいいや、これが目に入らぬか!!」
マサキが眉をひそめながら問うと、トウマは自らのステータスウインドウをマサキの前で広げて見せた。
――正確には、ステータスウインドウ内のスキル欄を。そして、その内の一つに《両手剣》の文字が浮かんでいるのを、マサキは見逃さなかった。
《両手剣》は、最も初期に手に入るエクストラスキルの一つであり、開放条件どころか存在すら疑わしい《刀》スキルとは違い、入手条件も判明している。条件はごく簡単で、筋力値を20まで上げることだ。マサキとトウマの現在のレベルは11で、トウマは今まで筋力:敏捷を2:1で割り振っていたため、ようやくその条件を満たしたのだ。ちなみに、筋力値でなく敏捷値を20まで上げた場合、細剣が出現することとなる。
マサキがウインドウから目を離すと、見ている方が少し苛立つほどに嬉しそうな表情を浮かべたトウマの顔が、またもや視界に入る。
2日目以降、マサキはトウマが笑顔を見せる回数が日に日に増えていると感じていた。
《シャドーハントウルフ》を狩ったあの夜に何か感情の変化があったのか、あるいはただ単に初日の緊張が解けただけなのか、マサキは判断することが出来ずにいたが、少なくとも今まで見てきた連中のように、その笑顔が何らかのマイナス的感情を含
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