A's編
第二十八話 裏 (グレアム、クロノ、ユーノ)
[10/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
しているのだろう。はたから見れば、嘘とわかる言葉をうのみにして、笑顔でうん、とうなずくと友達のもとへと走って行った。
ユーノとて、バカではない。いや、むしろ彼の頭の回転は優秀だ。だから、今の一族の内部も九歳にして理解している。
もしも、ユーノが孤児でなければ、現状も違ったのかもしれないが。ユーノの両親はすでに死んでおり、ユーノは孤児だ。もっとも、それでも一族全体が家族ともいえるため、寂しくはないのだが。
だが、問題は、親戚もいないことだ。どうやら、両親はスクライア一族に流れてきたようで、スクライア一族に親戚はいなかった。それが事態を余計にややこしくしていた。
前述したようにスクライア一族は、発掘現場―――しかも、ロストロギアを生業としている。そこで求められるのは知識と判断力と責任感。それを基準にすれば、ユーノは同年代でも頭一つ抜いていることは先の事件で証明された。
もしも、スクライア一族に親戚がいれば、彼らはユーノという駒で一族内部での発言権を高めようとするだろう。だが、その親戚がいない。小さな後ろ盾すらいないのだ。よって、水面下ではユーノの争奪戦が始まっていた。少なくとも十年後には、若者を率いているのはユーノだと確信して、一族内部の発言権を高めるために。いくら、一族全員が家族といっても、内部で派閥はあるのだ。
その争奪戦の方法は、婚姻によるものだ。スクライア一族は危険な場所が多く、発掘には人手が必要となる。後方支援もだ。よって、子どもも立派な労力なのだ
だから、必然的に結婚年齢も低くなる。成人と認められる十五歳と同時に結婚するものはスクライアの中では珍しい話ではない。そして、ユーノぐらいの年齢で恋人がいるというもの珍しい話ではないのだ。
もっとも、その場合は、女性が年下ということが多数なのだが。
ユーノが成人するまで後五年。これを長いとみるか、短いとみるか。ともかく、ユーノに近い年齢の女の子がいる家庭は、ユーノを狙っていることは間違いないだろう。現に、この休暇ともいえる期間にスクライアの里でデートに誘われたことは、両手では数えきれない。
もっとも、まだそんなことには興味がないユーノは、穏便にお引き取り願っているのだが。
―――はぁ、仕事ないかなぁ……。
まるで、職にあぶれた無職の大人のような考えをするユーノ。そんなことを考えたのが不運だったのだろうか。あるいは、幸運だったのか。まるで、彼の考えを呼んで、神がそれを与えたようにその知らせはやってきた。
「ユーノっ! 時空管理局のクロノさんから連絡よっ!!」
最近、一緒に子どもの面倒を見ている族長の孫娘の口から飛び出した意外な名前に首を傾げながら、ユーノは、とりあえず、彼女に子どもたちの面倒を任せて、魔法によ
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ