A's編
第二十八話 裏 (グレアム、クロノ、ユーノ)
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している」
そう言って、彼が目を落としたのは、一枚のカード。正確には、今度の作戦のかなめにもなるストレージデバイス―――氷結の杖≪デュランダル≫である。今度の作戦に納得のいかなかったクロノは、提案者のグレアムに直接、抗議に行ったのだが、相手にされず、代わりに渡されたのは作戦の要であるデュランダルだった。
「そんな……」
信じられないという表情をしたのは、エイミィも一緒だ。なぜなら、グレアムの名前は穏健派の中でも筆頭と認識されている人物なのだ。だから、一人の少女を犠牲にして闇の書を封印するというような作戦を提案するとは思えなかった。しかし、現実は彼女の期待を容易く裏切ったようだ。
しかし、そう感じているのは、クロノのほうが強いだろう。クロノにとってグレアムは、ただの上司という間柄ではない。彼の師匠であるリーゼアリアとリーゼロッテは、グレアムの使い魔であるし、彼の父はグレアムの部下であり、今までよくしてくれた父親のような存在なのだから。エイミィよりも裏切られたという感情が強いことは間違いないだろう。
「どうするの? クロノくん」
「……少なくとも今は作戦に沿って動くしかないだろう」
そう言いながら、クロノはふっきるように歩き出した。
まさかっ!? という表情をしながらエイミィもクロノの後を追う。しかし、エイミィはすぐに自分の間違いに気づいた。クロノは、『今は』と言ったのだ。
クロノがいくら時空管理局内部の名門であるハラオウン家の一人息子と言えども、時空管理局員の一員でしかない。つまり、作戦が評議会で可決された以上は、実行するしかない。組織にはルールがある。いくら自分の正義に反するからと言って命令違反をしてしまえば、組織として瓦解してしまう。もしも、クロノが命令違反をするとなれば、それは自らの進退をチップにしたときだけだろう。
ならば、このまま命令に唯々諾々と従って少女を犠牲に闇の書を封印するのか? と言われれば、答えは否だ。
クロノがこのまま命令に従えるはずがない。クロノは、『こうでなかったはずの未来』を一つでも減らそうとしてるのだ。それなのに自ら加担できるはずがない。しかし、手立てがない今は、計画に従って動くしかないだろう。計画通りに動いていないことがわかれば、すぐにでも作戦を実行する船を変えられてしまう。本作戦を実行する船は、アースラのようにアルカンシェルが装備でき、ある一定以上の腕があれば、問題なのだから。
しかし、そうなれば、間違いなく作戦は遂行されてしまう。一人の少女を犠牲に闇の書が封印されてしまう。
もしかしたら、それは喜ばしいことなのかもしれない。次の犠牲者はなくなるのだから。しかし―――しかし、だ。それでもクロノは許せない。
―――救われない
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