A's編
第二十八話 裏 (グレアム、クロノ、ユーノ)
[4/12]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
人はお互いに一瞬だけ目を合わせると、同時にグレアムに向き合い、強い意志を持ってコクリとうなずいた。そんな二人にグレアムは、自らの使い魔であるにも関わらず、ありがとう、と頭を下げるのだった。
◇ ◇ ◇
その日の評議会の空気は、さきほどまでの淡々と事務を進めるような雰囲気から一変した。
原因は、スクリーンの前に立つ前線からひいたはずの過去の英雄である老人から提案された計画が発表されたからだ。ほとんどの人間が信じられないというような表情をしている。無理もない、と原因を作ったはずのグレアムは思った。自分が、目の前の円卓を囲むメンバーだったとして、自分の恩師が似たような計画を発案すれば、到底信じられなかっただろうから。
「グレアム提督―――その計画は、本気なのでしょうか?」
「もちろんだとも」
評議会のグレアムから見ればまだ年若い提督が、ついに耐え切れなくなって聞いた。その言葉自体は、とても評議会で聞けるようなものではなかったが、それほどまでに信じれないものだったのだろう。
当然と言えば、当然だ。
なぜなら、グレアムが提案した闇の書の封印計画―――孤独な少女を犠牲にするものだったのだから。過激派ならばまだしも、穏健派の筆頭ともいえるグレアムが提案するべきものではない。
現にグレアムの肯定の言葉を聞いて穏健派の提督たちは動揺しており、過激派の人間は、我が意を得たり、と言わんばかりに笑っている。中庸派の人間は、グレアムの裏に隠された意図を探ろうと頭を悩ましていた。
時空管理局内部には、大きく分けて三つの派閥がある。
一つは、グレアムも所属している穏健派と言われるグループであり、事件に対して、犠牲を出さずに全員を助けようとする派閥だ。グレアムを筆頭にハラオウン家もこの派閥に所属している。
二つ目は、過激派と言われる派閥である。事件に対して、犠牲を出してもいいから、事態を収束させることに注力する派閥だ。彼らに言わせれば、事件は、長引けば長引くほどに犠牲者が増える。ならば、多少の犠牲はやむを得ず、それよりも事態の収束を図るということらしい。一を切り捨て、九を救うような派閥である。
三つ目は、中庸派と言われる派閥である。上記の二つの派閥は、自らの正義に従っているところがあるが、この派閥はむしろ、時空管理局内の地位や名誉に固執する人間だ。ゆえに、どちらの味方もしない。彼らにとって重要なことは、自らの評価が上がることだ。彼らはどちらかというと政治家の色が強い。過激派に味方することもあれば、穏健派に味方することもある。蝙蝠と言われることもあるが、意見が対立する二つの派閥の調整役ともいえる。
そして、大きな議案や管理局のおおまかな方針を決めるための評議会は、
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ