暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルってなんですか?
A's編
第二十八話 
[9/11]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
平静を務めて彼女に返答する。

 しばらくは、無言だった。おそらくは考えているのだろう。しかし、怒らないということを約束した僕を信じてくれたのか、彼女は恐る恐るとそのことを口にした。

『……ショウくんからもらったリボンを壊しちゃった』

 正直に言うと、僕がそのことを聞いたときは、なぁんだ、というのが率直なものだ。壊れてしまったものは仕方ない。むしろ、そんなに大事に思ってくれていたことをうれしく思うぐらいだ。しかし、なのはちゃんはそうは思わなかったようだ。思い切って口にした後、彼女は、繰り返し、繰り返し、電話口の向こう側で『ごめんなさい、ごめんなさい』と繰り返していた。

「大丈夫だよ。僕は、怒らないって約束したでしょう。うん、大丈夫。許すよ。なのはちゃんがリボンを壊しちゃったこと」

『……ほんとう?』

 どこか疑うような声。なのはちゃんにとって、僕が簡単に許すことは、そうそう信じられることではなかったのかもしれない。だが、それが真実だ。僕は、許そう。彼女が悪いと思っていることに対して。

「もちろん。ワザとじゃないんでしょう?」

 形あるものは、いつか壊れてしまうものだ。それに、この態度から察するに悪意を持って壊したわけではないのだろう。

『もちろんだよっ!』

 それを証明するかのようになのはちゃんは、力強く僕の言うことを否定してくれた。ならば、僕からいうことは何もない。ワザとではなく壊れてしまったのであれば、仕方ない、と言わざるを得ないだろう。

「だったら、何も問題はないよ。僕は、許すから」

『うん……』

 どこか安心したようななのはちゃんの声。もしも、壊したのが二週間前のこととすれば、これまでの不自然さにも説明がつくというものである。なにはともあれ、原因がわかって安心した。これからは、以前のように戻れるだろう。クロノさんの用事を伝えるためのついでだったとはいえ、解決したことはよかったと思う。

「それじゃ、僕の家に来てくれるかな?」

『うんっ! わかった! すぐに行くねっ!』

 そう言って、なのはちゃんからの電話が切れた。ツーツーという電話が切れた音を立てている携帯電話の通話を切るボタンを押すと、僕は今まで引っかかっていたなのはちゃんのことを解決できて、ほっと息を吐きながら、携帯をパタンと閉じるのだった。



   ◇  ◇  ◇



 なのはちゃんが来たのは、電話を切ってから三十分後だった。ピンポーンという呼び鈴を鳴らされた後、玄関に出てみると、そこにはちょこんと一人で立ったなのはちゃんがいた。いつものような私服にコートを羽織っている。ただ、一つだけ驚いたのは、いつもはリボンでくくっているはずの髪がまっすぐに下ろされていることだ。気分転換でもした
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ