A's編
第二十八話
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の家に来ない? クロノさんが、用事があるらしいんだ」
僕はできるだけ優しい声でなのはちゃんに話しかける。しかしながら、彼女からの返答はない。電話の向こう側から聞こえる息遣いから、彼女が電話を持っていることはわかるが、それがなければ、彼女が電話の向こう側にいることも信じられなかっただろう。
前までならば、すぐにでも返答があったような問いに無言のなのはちゃんの様子をかんがみるに、やっぱり僕は避けられていると考えたほうが妥当だろう。その言を僕は思いつくことができない。いや、人間関係なんてそんなものかもしれない。よかれと思ってやってことが、相手の癪に障ることなんて日常茶飯事だ。
もしかしたら、僕もどこかでなのはちゃんの癪に障るようなことをやってしまっていたのかもしれない。
「ねえ、僕、何かなのはちゃんを怒らせるようなことをしたかな?」
わからなければ、勇気をもって聞いてみるべきだ。そのまま、放置することは、関係の悪化しか招かない。何か悪いことをしたのであれば、謝らなくてはいけないが、原因もわからずにあやまったところで、虚しいだけである。だから、僕は、なのはちゃんに尋ねたのだが、彼女の反応は、恐ろしいまでに顕著だった。
『そんなことしてないっ!!』
突然、携帯電話の通話口から聞こえてきたのは、なのはちゃんの必死に否定するような声だった。今までの暗い声に比べ物にならないものだった。
なのはちゃんのそんな声に驚いたのは、別にして、僕が原因ではないということはどういうことだろうか? 気になって聞いてみようとは思ったが、その前になにはちゃんが、ぽつりと呟くように口にした。
『悪いのは、私……』
「なのはちゃんが?」
はて? いったいどういうことだろうか? と思考を回してみる。僕が考えるに彼女が何か、僕にしたような記憶はない。記憶にないからいぶかしげに思っていたのだ。いったい、彼女が何をしたというのだろうか? どうして、彼女は、僕が気にも留めていないことで自分を責めているのだろうか。
「どういうこと?」
しかし、僕の問いになのはちゃんからの答えはなかった。
「大丈夫、怒らないから、教えてよ」
おそらく、なのはちゃんが恐れているのは、僕から怒られると思っているのだろう。自分が悪いと言っておきながら、言えないのはそのせいだろう。僕が気付いてしまうことが怖いのだろう。
そんな彼女を許すのは簡単だ。しかし、単純に許しを与えても意味がない。何を許すかが重要なのだ。
『……本当?』
「約束するよ。僕は絶対になのはちゃんを怒らない」
信じたい、だけど、上手い話を簡単に信じられないのか、なのはちゃんはすがるようにその一言を口にした。それに対して、僕はできるだけ
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