五月 栄光と黄金(中)
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に頷く。
「はい、陸軍としても御国の治安維持により一層力を入れるつもりです。
それでは――御協力ありがとうございました」
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同日 午後第二刻
皇州 皇南街道 塞原郊外 兵部省公用馬車内
兵部省人務部監察課主査 兼 首席監察官附き副官 馬堂豊久
「――さて、どうだった?」
「やはり、接点が少ないとはおもいますね。皇都で積まれた二万二千金がぜ襲撃後、宮城で一万八千金になっていた。その間で鈴鳴屋の輸送員が馬車を離れたのは匪賊の襲撃を受けた時のみです。
当然ながら輸送員は皆、信頼の厚い人間をあてています。態々個人的な事情に窃盗する事はまず考える必要はないかと」
「ふむ、そこまでは道理だな。それで?」
「――まず、現状の確認として、受勲審査の問題点として輸送金の喪失がある。
本来ならば、軍がこれをおこなったものではない、とできれば良いのですがそれには時間がかかり過ぎます。とはいってもやはり現状だと匪賊の一部が奪って逃走した可能性が高い――そういった結論でも十分ではありますが、今回はこの行方をはっきりさせ汚点を残さないことも重視されています。
つまり、軍部外の人間が千金箱を持ち去った事を理論的に証明できれば良いわけです」
「その中で、現状はっきりと第一容疑者であるのは行方不明となった匪賊達です。
大半が負傷して逃亡したものだと思われますが、中には最初に小隊が到着した時点で見切りをつけて逃亡したものが居たとしてもおかしくありません」
堂賀も同調して頷く。
「反論としては――持ち出した金が少なすぎる事と、もしそうならば踏みとどまった連中が多すぎるということだな。まぁ確かに烏合の衆だったのだろうし、万全な統率がとれていたのではない。応援が来ることを見越して逃げ出したのが居たとしてもおかしくないだろう。私もその線はまだ捨てきっていない。」
「次に鈴鳴屋の輸送員ですが――これはさっき申し上げた通り、どう考えても不自然です。
上り調子の大手両替商本店が用意した輸送員ですからね、厳重な吟味を経て信頼された者があてられています。それに持ち出す機会もほぼ皆無です。匪賊共は元来妙髪山地の周辺で暴れていた連中で自作自演はまずありえない。そんなことをしても殺されて全額持って行かれるのがオチです。
たしかに情報の漏洩元は気になりますが、競合している商家が嫌がらせ工作を行ったのだと考えるべきでしょう。軍が警邏を行っているのは皇都で調べればすぐにわかります」
「では貴様は匪賊が奪ったと考えているのか?」
「その結論が今のところ一番自然ではあると思いますが――」
豊久が言葉を濁すと嬉しそうに堂賀は言葉を引き取る
「気になる事があると」
「先程の番頭は本店に連絡する事をいうべきか一瞬迷っていまし
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