五月 栄光と黄金(中)
[4/6]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
と、堂賀大佐様と馬堂大尉様でしたな。
私はこちらの出納を担当しています三井と申します。先日の不幸に関して――あぁ、申し訳ありません、不幸と云うのは此方の――」
「いえ、勿論。貴方と この御店にとってはまぎれもない不幸である事は良く分かっております、三井さん。
それでは、例の襲撃事件についての事実関係の確認の為に、輸送と護衛を担当した者達から聞き取り調査を行いたいのだが、問題ないでしょうか」
強制権が無い為か、それとも元からそうなのか、堂賀は大佐とは思えない程に丁重な口調で三井に問いかける。
「え?えぇ勿論です。あの中尉さんが受勲されたのならば保管してある馬車を見世物に――もとい、記念品として飾れば御店にも良い宣伝になりますし」
ふと視線を逸らした豊久の視界に抱えていた書類の中に“恐怖の馬車、呪われた黄金と勇士達”と書かれた広告案らしきものが飛び込んできた。
――逞しいなぁ。
乾いた笑いを浮かべた豊久は上官に脇を小突かれ、慌てて帳面を取り出した。
・
・
・
一通りの事実確認を終わらせると最後に警保署に責任者として訪れていた三井番頭に堂賀は微笑を浮かべて話しかける。
「さて、最後になりましたが改めてご協力を感謝いたします」
「いえ、そういっていただいて光栄です、堂賀様。」
「それでは――改めて確認をしたいのですが、貴方は宮城支店の代表者として皇都本店より輸送された二万二千金を受け取る筈だった。しかし、匪賊の襲撃を受けて宮城警保署の保護を受けた輸送随行員達から連絡を受けて警保署に到着。それから一刻半程で奪還された輸送馬車と積荷であった正貨二万二千金を確認、だが四千金が喪われていた」
「はい、その通りでございます。
御存じでしょうが特別頑丈に作らせたものだったのに、蝶番ごと叩き壊されておりました。
こんな商売ですから金の魔性というものには人一倍通じているつもりでしたがぞっとしないものでした。」
そう云った後に一瞬、目を伏せてから口を開いた。
「あぁ、その前に襲撃の知らせを受けた時点で皇都本店に導術通信を飛ばしています。
これは当たり前ですが、万一の事があった場合の為です」
――ん?
僅かに違和感を感じた豊久は帳面から顔を上げる。
「えぇそうでしたね。こちらにも書かれています」
監察官の言葉に番頭は無意識にか、ほっと息を吐き顔を赤らめながら事後処理の話をまくし立てた。
「――正直なところ、死者こそ出ませんでしたが、四千金が失われたのは痛手でした。本店からの支援もあって早期に手を打つことができ御陰様でどうにか持ち直して今に至るといった次第です。皇州は流通の要です、その街道でこのような事件が起きたというのは我々のような商売にとっても恐ろしい事でございます」
首を振る番頭に堂賀も生真面目そう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ