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或る皇国将校の回想録 前日譚 監察課の月例報告書
五月 栄光と黄金(中)
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皇紀五百六十四年 五月二日 午後第二刻
皇州 皇南街道 兵部省公用馬車内
兵部省人務部監察課 首席監察官 堂賀静成大佐


「――成程、御協力ありがとう、中寺さん。これでより詳細な当時の状況を把握できました。それでは聯隊本部では事後処理に関する書類の精査と関係者の証言を確認したいと思います」
首席監察官はそう云いながらちらり、と副官に視線を送ると副官もそつなく綴じた帳面をゆらしながら頷き返す。 さすがに旅団副官に抜擢されただけあり、馬堂大尉の補佐官としての能力には堂賀も満足していた。
「もう間もなく駐屯地に到着いたします。戦闘に参加した者達もすでに招集しておりますので首席監察官の聞き取りも迅速に行えるでしょう」
先任であり、立場としても格上である堂賀に対して丁寧な口調で中寺大佐は答える。
「ありがとう。時間はなるたけかからないようにしますが、ご迷惑をかけて申し訳ない」
堂賀の言葉に答えるように、御者が駐屯地が見えてきたと告げる。
「それでは我が聯隊の駐屯地を御案内いたしましょう」
胸を張って聯隊長は云った。



或る皇国将校の回想録前日譚 監察課の月例報告
五月 栄光と黄金(中)



同日 午後第二刻半 皇州都護銃兵第三聯隊駐屯地聯隊本部庁舎内 会議室
兵部省人務部監察課主査 兼 首席監察官附き副官 馬堂豊久大尉


「戦闘時に指揮を執った第一大隊第三中隊 中隊長の松良です」
普段は敬礼を奉げる先には普段は聯隊長か首席幕僚が座る上座に座る首席監察官が居た。
「出頭御苦労、松良大尉。これから行う審問は記録されることになる。これは人務部において保管されることになるのでその点について了解してもらいたい」

「はい、首席監察官殿」
「うむ、こちらが私の補佐を行っている副官の馬堂豊久大尉だ。この審問の記録も担当している」
紹介を受けて豊久も敬礼を送る。
「よろしくお願いします、松良大尉」

「――さて、それでは始めようか」
堂賀が向き直り、審問を始める。
「貴官は今年――皇紀五百六十四年の三月十三日に中隊を率いて妙髪山地から皇南街道まで足を延ばした匪賊の討伐に出発した。この時に起きたことを詳しく話してもらいたい」

「はい、首席監察官殿。自分は――」



 小半刻程の説明を経て、豊久は幾つか質問を飛ばす。
「つまり、先行した井田中尉指揮下の第一小隊は主力の到着によって瓦解した匪賊の隊列の掃討時には貴官の下で再編と負傷者の救護にあたっていたのですね?」

「はい、その通りです」

「その時に確保した馬車を見張っていたのは?」

「掃討の指揮を第三小隊に任せ、本部と第二小隊から引き抜いた一個分隊の護衛の下で後退を行い、三里程南下したところで駆けつけた警務局の警備隊
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