第4章 聖痕
第43話 異界化現象
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です。ここで急いで学院に帰るよりは……。
カジノ事件の後……。元々、オルレアン家に仕えていた使用人たちが一掃されてから後に、一度だけ会わせて貰った事の有る線の細い、タバサのような凛とした雰囲気ではない、如何にも儚げな佳人を思い浮かべながら、そう問い掛ける俺。
タバサからの返事はない。しかし、彼女は俺を真っ直ぐに見つめ返した。
遙か眼下に広がるのは、ラグドリアン湖と言う、地球世界には存在していない、この世界にしか存在しない湖。そして、その湖のガリア側がタバサ……。いや、オルレアン大公家の領地で有り、トリステイン側がモンモランシ家の領地で有る。
そして、彼女はわずかに首肯く。これは肯定。おそらく、俺の言葉の足りない問い掛けの意図を、あっさりと理解したのでしょう。
そう。つまり、彼女の返事の意味は、実家に寄り道をする必要はない、と言う事。
彼女の発して居る気を読むと、無理をしているような雰囲気は有りません。だとすると、彼女は、本当に、今は帰る必要はないと思っていると言う事。
自らの父親の暗殺に、ガリア王家が関係していなかった以上、今、母親に危険が迫る可能性は低いと判断しているのでしょうか。
尚、現状では、タバサの母親は、ガリア王家より派遣されて来た人間に因って身の回りの世話を為されています。
あの殺人祭鬼エリックの言葉から、オルレアン家に残った使用人の徹底的な調査が行われ、以前より居た使用人はすべて入れ替えられ、現在は、全員がタバサの知らない顔と成っています。
ただ、以前にオルレアン家に仕えていた使用人が、すべて殺人祭鬼の関係者だったかどうかの報告は為されていないのですが……。
そう考えながら、真っ直ぐに蒼き姫を見つめる俺。
現状では、彼女の夢を叶える事さえままならない状態。このまま進めば、魔法学院卒業後は、オルレアン大公家の復興か、それともタバサを家長に据えた新しい貴族の家名を作り上げる可能性が高いでしょう。
まして、おそらくそれが貴族としては正しい選択です。そして、血筋を残す事が重要な王家の一員としては、タバサが伝えている王家の血を絶やす事は許されない事でも有ると思います。
それならば、彼女と彼女の母親を連れて、この場から。魔法学院から。ガリアからも逃げ出す……。
そんな、不穏当な考えが俺の頭に浮かんでは、直ぐに過去へと消え去る。
その理由は、実現の可能性が低すぎるから。
そう。俺の身体に刻まれつつ有る生け贄の印が、それを難しい物に変えていますから。これが、……この聖痕を刻みつつある現象が、今、起きつつ有る、何か大きな流れに起因する事象ならば、簡単に逃げ出す事など出来はしません。
おそらく、何処に逃げ出そうとも、後ろから追いついて来て、俺と、
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