第4章 聖痕
第43話 異界化現象
[1/9]
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
六月 、第四週、虚無の曜日。
結局、今回の北花壇騎士関係の御仕事も足かけ三週間に渡っての任務と成って仕舞い、魔法学院に戻って来られるようになったのは出発してから十一日の日数が立っていました。
更に、任務に予想以上の時間が掛かって仕舞ったが故に、一学期の学期末には間に合う事もなく、魔法学院は、本日より八月の末までの長い夏休みに入っているはずです。
実際、タバサの出席日数って、進級に必要な分が確保出来ているのでしょうか。このままでは進級すら覚束なくなる可能性も有ると思うのですが。
もっとも、彼女が経験している戦いは、実践を旨とする魔法学院の教育方針には十分合致していると思いますし、今の彼女の魔法の実力から考えると、魔法自慢の疾風のギトー先生を相手にしても、あっさりと退ける事が可能でしょうから、多分、大丈夫だと思っているのですが……。
それでも、少し不安では有りますね。
そして、出発した際は俺とタバサだけだったのですが、帰りはモンモランシーも一緒の旅と成りました。
……故に、転移魔法は使用せず、以前に式神契約を交わしたワイバーンを召喚して、少し時間を掛けての空の旅と成ったのですが。
夕日を目指して飛ぶ翼ある竜。その鮮やかな緋色によって、まるで、世界の理自体が書き換えられるかのような情景で有った。
山や、湖。そして、多くの人々が暮らす街さえも赤い色に染め上げ、俺達の目の前にパノラマの如く広がり、そして、次の瞬間には後方へと流れ去って行く。
風の精霊により守られしこの翼ある竜は、通常の風竜よりも高速で、更により上空を飛び、予想よりはずっと早い時間帯。少なくとも、今夜の夕飯は、魔法学院のタバサの部屋で食べられそうな時間帯に到着出来る雰囲気で、人々が暮らす地上より遙か上空を滑るように飛行していた。
しかし、この世界にやって来てから色々な出来事に遭遇しましたが、この六月も、十分に波乱万丈な月で有ったと表現しても良いでしょうね。
俺は、自然の産み出した絶景から、赤く染まった世界の中に有って尚、蒼をイメージさせる少女を視界の中心に納めながらそう思う。
夕陽に染まった雲と、そして遠くに暮れ行く高き山々。その特徴的な蒼き髪と、冬の氷空を連想させる瞳。迫り来る夜の物悲しさと、彼女が纏いし雰囲気。そのすべてが相まって、何処か一枚の宗教画を思い起こさせる少女。
普段通り、メガネ越しの、温かみが有るとは言い難い視線で俺を見つめ返す蒼き御主人様。
ただ、それでも……。
【タバサ。このまま、学院に帰って良いのか?】
俺は、【念話】にて彼女に問い掛ける。それに、どうせ本日より夏休み
[8]前話 前書き [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ