第二十話 転校生は美少女だけれどその五
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「それでは」
「奇麗に飾ってあるわね」
セーラはそのアイスクリームを見てうっとりとなっていた。
「まずは目で楽しんで頂きたいと思いまして」
シェフが述べた。
「そうだったの」
「如何でしょうか」
「素晴らしいわ」
セーラはうっとりとした目でそのアイスクリームを見続けている。本当に目でそれを楽しんでいた。
「ここまでのアイスクリームはあまり見たことがないわ」
「お褒めに預かり光栄です」
「ところでさ」
そんなやり取りを見ながら蝉玉がスターリングに声をかけてきた。
「何?」
「調理室って随分遠くよね」
「うん」
別の校舎にある。とてもではないがかなり離れている。
「それでさ。どうして普通にああしてできたての溶けてもいないアイスクリームが出て来るの?」
「何でだろうね」
それが最大の謎であった。
「しかもね」
蝉玉はさらに言う。
「あったかい鶏とかも出たし。しかも随分手間がかかりそうなの」
「そもそもだよ」
スターリングはそこに付け加えてきた。
「あの調理室にあそこまでのフルコース作れるものあったっけ」
「初耳よ」
蝉玉はそれをすぐに否定した。
「そんなのある学校ってそうはないわよ」
「うちの学校って設備はかなりのものだよね」
「それでもよ」
彼女の声は少しムキになっていた。
「フルコースよ。しかも急にホイホイと出て来るなんて」
「やっぱり有り得ない」
「有り得ないどころじゃないわよ。絶対に何か変よ」
「そもそもさ」
スターリングはセーラの食事を見守りながら言う。
「うちの学校の調理室を使っているのかな、あの人達」
それも大きな疑問であった。
「どっからともなく出してるんじゃないかな」
「ううん」
言われてみるとそんな気もする。
「そうかもね」
「そうだよね、何かさ」
「どっか別の場所で調理しているみたいよね」
「それでそのどっかから出て来て」
何か嫌な考えになってきているのが自分達でもわかる。それが凄く嫌だった。
「あのさ」
「だよね」
二人は言い合う。
「これがあのベッキーさんの」
「妖術じゃないかしら」
「うふふ」
ベッキーはそんな二人の話を聞きながら謎めいた微笑みを浮かべていた。
「果たして真実は如何に」
セーラはそんな彼等をよそに楽しい食事を続けていた。しかしそれはある意味非常に謎の多い恐ろしい食事であった。だが彼女はそんなことはお構いなしであった。
転校生は美少女だけれど 完
2006・12・4
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