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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
運命の夜の先へ
狂躁の夜を越えて(T)
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しなくてはならない日が来れば、彼は迷うことなく城を跡にする。

 だからそれまでには、彼の背中を守れるぐらいには強くなりたい。

 そうなれればきっと、いつものように、私を置いていくことはしないだろう。

「そうだなぁ、ざっと三ヶ月くらいか」
「え、もうそんなに時間ないの!?」
「そりゃあね。半年も休めば十分だろう。だからそれまでに、もう心配しなくていいくらいにはなってくれよ?」
「うー……頑張る……」

 思ったより短かった制限時間に項垂れる。

 服に纏わりついた粉雪をさっと払い、少女は剣を仕舞う。

「うん、今日はもうご飯にしよ!」
「わかった、それじゃあ稽古は終いだな」
「何が食べたい?」
「そーだなぁ……って、作るの俺だろ」
「ふふふ、そうだよー?」

 屈託無い笑顔を見せる。

 戦士として優秀で、魔術にも長けていて、料理も出来る。
 少女から見れば、彼ほどの男は世界に二人と居ない。

 愛しさを感じつつ、少女はいつものように青年にリクエストをする。

「私あれが食べたい、ほら、えーと……ビースト、ガノン?」
「なんだその魔獣みたいな名前。ビーフストロガノフだろ?」
「そう、それ!」
「ほんとアレ好きだなぁ。一週間に一回は食べてるぞ」

 ぼやきながらも少女の言うことをそのまま聞き入れる。
 少女も甘えすぎではあるが、青年も甘やかしすぎだろう。

 青年の左腕に、少女は思い切り抱きつく。

「おい、当たってるぞ」
「当ててるのよ」

 仲睦まじく話しながら、二人は城の中へと戻る。

 きっとこの幸せは、永く続くだろう。
 少女はそう信じて疑っていなかった。










 共に旅に出て、決別することになる数年後のこと。

 青年が彼女に稽古をつけていた理由。

 それがいつの日か、世界に仇為す魔者となる自分を。

 少女自身の手で────────










(ん……夢か……?)

 言い知れない虚脱感から目覚める。

 どこか別の時代、遠い異国の出来事。
 見たことのある銀色の少女と、黒い青年の儚い夢物語。

 周囲に幸福を振り撒くような仲睦まじさ。
 嫉妬すら覚える幸せの形を見せられながら、二人が城に入るところで目が覚めてしまった。

(なんだろう、あの夢……いや、あれ?)

 確か俺はバーサーカーと戦って、傷を負った士郎を家まで運んで。

 遂に限界が来て、気絶するように眠ったはずだが…………

(……なんだ、逆さまになった山が二つ?)

 霞がかった視界。
 瞼を擦りながらゆっくりと目を凝らす。

 降り注ぐ陽光を遮るように、視界を塞ぐ二つの
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