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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
運命の夜の先へ
狂躁の夜を越えて(T)
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こかに意識の隙間が出来る」
この稽古が始まってからどれくらい経つのだろう。
数年前まで、とある事情から少女には命の期限が迫っていた。
そんな小さな命を救うために、青年は独り、世界を駆け回っていた。
少女の友人や家族は、彼女を救うために必要なモノを手に入れられる確率に、諦観の念を抱く者がほとんど。
たった一人諦めなかった青年のおかげで無事に生還した少女は、青年に感謝しながら、彼と同じく世界を巡りたいと言い出したのだ。
「剣だからって剣の戦い方をする必要はないぞ。殴ってもいいし蹴ってもいい。身体全体を使え。感情を高ぶらせたり、熱くなってもダメだ」
だが青年は別に、遊びで世界を周っているわけではない。
初めは少女を救うモノを探しに行く旅だったが、訳あって青年はその後も世界巡りをすることになっていた。
その理由を、青年は決して語らない。
「感情は出力を高めるが、その分無駄な力も掛かる。適切な力の使い方をするなら、基本的に感情は表に出さないことだ」
「気を張って感情を乗せたほうが、力が強くなる気がするけど?」
「それはそういう気がするだけ。怒りや憎しみ、感情のままに力を振るうより、ただ躊躇いをなくした無感動な力の方が強いんだ」
少女にとって大事なものや人はいくつかあるしいるが、自分を抑えきれないほどに愛しいと思うのはこの青年だけだった。
たった一人、自分を救うために命を懸けた青年。
家族も友人も諦めた自分の命を諦めなかった彼に、どれほどの感謝をしてもし足りない。
「そっかぁ。魔術なら負けないんだけどなぁ」
「おいおい、勘弁してくれよ。魔術戦なんてしようもんなら、3秒で負ける自信があるぞ」
「ふふー。そこらの魔術師が百人で来ても余裕なんだから」
「何故そうなるかって過程を理解してないのに、工程も詠唱もすっ飛ばして結果を作り出すとかもう魔術じゃないだろ…………」
少女が持つ特異性。
全身が魔術回路であるといってもいいほどの魔力の塊である少女。
『秘蹟』と呼ばれるその
業
(
わざ
)
は、少女の魔力で理論上可能なモノであれば、過程を無視して結果を作り出すという、聖人が持つ『奇跡』の力に近い能力だ。
まだ幼かった頃は力の使い方を理解していなかったために扱えなかったが、その能力をフルに扱える今では、人間の魔術師で彼女に敵うものは居ないだろう。
他愛なく話をしつつ、思い出したように少女は青年に問いかけた。
「……ね、あとどれくらい、ここに居るつもりなの?」
青年の顔を覗き込むようにして訊ねる。
前回の旅から青年が帰ってきてから既に三ヶ月。
しばらくはゆっくりすると言っていた彼を、無理やり城に迎えて押し込んではいるが、本当に出発
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