五月 栄光と黄金(上)
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は馬堂大尉と堂賀大佐の間を行きつ戻りつしていた。
――我々は疎ましい詮索屋、だがそれ以上ではなし、か。
観察を続けながら堂賀大佐は淡々と説明を行う。
「この度の審査は迅速に行うべきであると官房と局長閣下の御判断でしたので、閣下
此方は私の副官であり、監察課主査を兼任している馬堂大尉です。今回の受勲審査に関する庶務を担当します」
紹介に応じて馬堂大尉は上官たちに敬礼を奉げる。
「――これは私の個人副官である暁美霧緒少佐相当官、こちらは都護銃兵第三聯隊聯隊長の中寺大佐だ。この度の受勲審査に協力する為に呼び出した。司令部にある対象に関しての記録書類の類は既に幕僚が精査用に台帳を整理するように命じている。聯隊以下の部隊に対する捜査にかんしては中寺聯隊長が便宜をはかる形で貴官達の調査に協力する」
これで十分だろうと言いたげに中年の司令長官が視線を送ると首席監察官はその意をくみ取って口を開いた。
「はい、閣下。御多忙な最中に御協力を頂けた事、大変有りがたく存じます」
そう云って兵部省からの来訪者達が立ち去るのを見届けると、須ヶ川は細巻を取り出し呟く。
「忌々しい荒探し共め、さっさと追い出させたいものだが――」
同日 午前第九刻 皇州都護鎮台司令部衛兵本部
兵部省陸軍局人務部監察課主査 兼 首席監察官附き副官 馬堂豊久大尉
「――さて、これで宜しいですか?」
年上の中尉に対し、馬堂大尉は丁重な口調で記帳を手渡す。
「あぁ確かに、協力ありがとうございます、副官殿」
「いや、どのみち何かあったらこの証明がないと困るからな。経費がおりなかったら私が監察官殿に叱られる。
しかし大したものだね。あの首監殿にいきなり手続きを守れ、とは」
小声で笑う。
「私なんて最初の一週間は一挙一動に気を配っていたよ。ここ最近でようやく副官ぶりに慣れたようなものだ」
「いえ、自分にも相応に我欲があるという事です」
本田はそう云って苦笑する。
「いや、それでも、だからこそ、言い出せた事を大したものだと思うよ」
微かながら真摯な羨望を感じさせる声だった。
「――あぁ、失礼。司令の事は確と監察官殿にお伝えしておくよ。
まぁそう時間のかからない内にまた顔を合わせる事になるかもしれないが」
――なにせ、あなたもあの大佐に目をつけられたからな。
続く言葉を飲み込み。上官を真似た不敵な笑みを浮かべると豊久も上官と合流すべく立ち上がった。
同日 同刻 皇州都護鎮台司令部庁舎内小会議室
兵部省陸軍局人務部監察課首席監察官 堂賀静成大佐
「首席監察官殿、こちらが対象部隊に関連した文章をまとめたものです。警務局から移送されたものもこちらに御用意しております。
他に必要なものがありましたら私か、兵站参謀にお伝えして
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