第一章 グレンダン編
天剣授受者
嫌よ嫌よも好きのうち
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それは突然現れた。
「オイ? こんな雑魚で俺に傷一つ、むしろ触れることが出来ると思ってんのか?」
仮面の男はヤレヤレと首を振る。
男の周りには不思議な集団が、ノコギリのような歪な刃を持った剣を突き立てていた。しかし、その全てが男に触れることができずにいた。まるでそこに見えない壁があるかのようにだ。
シキはその集団を見た。
黒いコートを着込み、獣の仮面で素顔を隠している。体を覆っているコートのせいで男か女か判断しづらい。
「実力の差はわかってんだろ? それともあの馬鹿が教えてないだけか?」
「……我々はイグナシスの夢想を実現するための駒」
「お前が誰だか知らないが邪魔建てはするな」
「そこにいるのは特異点、イグナシスはそれを欲している」
「さっすが下っ端戦闘員、狼面衆、面白みが全然ないな」
男はため息をつきながら狼面衆と呼んだその集団を見た。
同じ声、同じ語調、全員がそうして喋っている。まるで録音されたカセットテープを流しているように聞こえてしまう。
そこにはなんの感情も感じられない。
しかし、シキを狙っていることはわかった。
「夢想ねぇ……別段、否定しするわけじゃないが」
「ならばそこを退け」
狼面衆がさらに力を込めて剣を押すが、ビクリともしない。まるで剣が静止しているかのように錯覚してしまう。
仮面の男は指をピンと立てる。
「気に入らないから消えろ」
軽い語調だった。まるでランチを頼むような軽い声、それだけで男に剣を突き立てていた狼面衆たちが消えた。
「やれやれ、せめてレヴァクラスを百は欲しいぞ。まぁ、暇つぶしにしかならんが」
男はつまらなそうにそう話す。
シキは体の震えが止まらなかった。目の前の男に恐怖していたのだ。
無理もないだろう、男は戦いをする素振りもなく武装した複数の武芸者をおそらく殺したのだ。さすがのシキも棒立ちで、あの攻撃を受けれるほど身体を丈夫には作られていない。
それをただ指を立てただけで終わらせたのだ。もはや強いとかそういう問題ではない。次元が違いすぎる。
「さてはて、シキ・マーフェス」
「な、なんで俺の名前を」
「ちょっと寝ろ」
そう男に言われると、シキは抗えないほどの眠気に襲われる。
平衡感覚がすぐになくなり、地面に倒れる。
男はそんなシキを見下ろしながら、何かを喋っている。しかし、眠気に負けそうなシキにはまったく耳に入らない。しかし、直接脳に響くように聞こえてくる声があった。
今はまだ忘れてろ。
「なんだ、ってんだ」
時期にわかる。嫌っていうくらいな。
「知る、か……くそったれ」
それまでは守ってやる。イグナシスからも、リグザリオからも、あのおてんば娘からも。
「わけ、わから、ないことを
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