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故郷は青き星
第十七話
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もらいます』
「それはちょっと困る。そっちからしたら骨董品でしかも子供のおもちゃレベルかもしれないが、あれでも俺達には最新技術の機密の塊だ。勝手に触れられたら我々の立場が無い」
 使えなくなった船長の変わりに、No.2である操縦手としての自覚からかロバートが慌てて遮った。
『そうなると、貴方達をどうやって地球に送り届けるべきか……』
 エルシャンは困った振りをする。むしろ彼にとっては思った通りの展開であり、相手が重要なカードを一枚切ってしまったことに嬉しくなる表情を押さえるために顔をしかめるしかなっかったのだった。
「うっ……」
 ロバートも自分達が地球に戻る方法が無いということに気付く。
 これから地球に戻るまでの長い道のりを往く方法が無い。しかも最も自分達にとってフリーハンドが与えられるはずの現状復帰を既に断ってしまっている。
『……その方法は後ほど話し合うとして、先ずは治療を行いたいのですが?』
 だがエルシャンは優位なカードを敢えて引っ込める。追い詰めても意味は無い。小さい信頼を『掠め取る』のが交渉だと彼は信じるタイプだった。
「治療ですか?」
『はい。それで出来れば貴方達、地球人の身体データのサンプルを取らせていただければありがたいのですが?』
「それは治療のために必要なのですか?」
『ええ、治療用のナノマシーンを投与すれば骨折程度なら24時間程度で完治が可能ですが、その為には検査しナノマシーンを調整する必要があります。それに事故とはいえ、せっかく文明を持つ知性体とコンタクトしたのですからデータを持ち帰りたいという気持ちもあります』
 そんな彼だから身体データが欲しい事も隠すことはしなかった。
「そうですか……では治療用ナノマシーンとは治療後に何らかの問題が残る事は?」
『治療処置終了後、一部を除けば体外に排出されますし、残る一部も分解して身体組織の一部となり吸収されるので、副作用や治療の痕跡が残る事もありません。ですから後から彼女の身体を調べたとしてもナノマシーンは検出されませんよ』
「そうですか……しかし──」
「私はその治療を受けてみたい」
 断ろうとしたロバートの言葉をクリスタルが遮る。
「1人の医者として、異星人の進んだ医療の一端を身をもって確かめられるなんて機会を逃したくないわ。そんな事したら絶対に一生後悔し続ける。ナノマシーン素晴らしじゃない? 私は治療を受ける。そして地球に帰ったら真っ先に治療した足を徹底的に調べ上げるの。必要なら足を切開して治療箇所の骨をを切り採ってでも、その治療のプロセスを解き明かして見せるわ」
 そう一気にまくし立てられたロバートは『このマッドドクターめ』と内心毒づき、トールは日本語で「匙は投げられた」と呟くが、誰にもジョークが通じないので寂しく思った。

「分かっ
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