§28 広がる戦禍
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も返してくださいました。更に教主様ご自身もあちらへいらっしゃるようですし」
日本はこれから忙しくなるとみてまず間違いないだろう。最凶の妖人が襲来するのだ。各地の警護に割く人員の不足はもはや決定事項だろう。本格的に彼女が動くならば大混乱は避けられない。それも首都に襲来するとなれば、なおさらだ。そう思い、事態を打開する可能性はゼロではないと自身を鼓舞す。
「予想外の状況に転がりましたが寧ろ僥倖かもしれません。これだけ大事になってきますとわざわざ私を追ってきてくださる黒王子様もそう易々とは動けないでしょう」
アレクは彼女以上に顔が知られている。それだけでも術者が集結するであろう土地では相当動きにくくなるはずだ。おそらく彼も情報網は東京周辺にあるのだろう。日本の機関がこの近辺に集中しているように。だが、そうはいってもここはホームグラウンドではない。ならば如何に神速の術を持っていたところで、派手に動けば発覚するのも時間の問題。一国の首都に神殺しの魔王が三人。地雷原という表現すら生温い状況。
「更にアーシェラの事、そろそろ大陸の冥王様にも伝わる筈です」
ここにジョン・プルート・スミスが加わったらどうなるか。トドメを刺し損ねたアーシェラを追って現地入りする可能性は十二分に存在する。そうなれば情勢は誰も読むことが出来なくなる。
「それも計画通りかね?」
”彼”のからかうような声に苦笑いしながら、彼女は計画を練り直す。
「まさか。元々露呈すると思っておりました。ただあの娘が他人に姿を見られたことで少々早まっただけですわ。これも嬉しい誤算です。」
一都市に魔王が計四名という状況になってしまえば、彼女自身の存在などあってないようなものだ。不確定要素が入り乱れすぎていることが、逆転の可能性を導き出す、気がする。毒を持って毒を征す。どうせ教主に接触したことは賢人議会に伝わっているだろう。ならば、リスクを覚悟で欧州の剣王や東欧の侯爵にも接触すべきか。東京にこれだけ集結すれば、まず彼女の目論見は露呈しないだろう。金管楽器を演奏している隣の家でガラスが割れても誰も気にすることがないように。
「つきましては叔父様、少々お願いが……」
あとは陽動の為に彼女の庇護者の欧州での目撃があれば十分だろう。欧州で隙をついて策謀を起こすように見せかけられればそれで目的は達したも同然。あくまでも庇護者を「偶然発見した」という形で済ませなければならない、ということが難易度を上げるが大して難易度が上昇する訳ではない。
「気取られる前に、全て終わらせます」
確固たる決意と共に、魔女王は目的地を只々目指す。
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