§26 料理店での遭遇者
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題をぶった切る恵那。話の流れがよろしくないので黎斗としては万々歳である。幹彦に問いかける彼女に彼は疲れた表情を向けた。
「今帰りなんだよ……」
何があったのかはわからないがどんよりとした空気が見えるようだ。どこか苦労性のニオイがする。
「店の前でぐだっててもしょうがない。とりあえず入りましょ。九法塚さんもどうですか?」
「僕は……いや、じゃあご一緒させてもらおうか」
断ろうとした青年だが何かを考え直したように頷いた。こちらへ向けた意味ありげな視線といい厄介事の気配が漂う。
「……じゃあ、入りますか」
何が飛び出すかはわからないが酷い案件が出てくることは無いだろう、と楽観視した黎斗は料理を注文するころにはすっかりこの事を忘れていた。
???時刻は若干、前後する。
「……一足遅かったようですね」
幽世で呟いたのは一人の乙女。無念そうな声音と、硬い表情。彼女にはわかる。この近辺で激戦があったことが。上手く修復して誤魔化したようだが、それでも彼女の目を欺くことなど、出来はしない。一通り周囲を見渡した後、そのまま彼女は歩きはじめた。その足取りに、迷いはない。
「……ここで残滓が途絶えている。現世に戻った? いや、それにしては消え方がおかしい。唐突過ぎる。現世に戻る呪法の痕跡もない。突如気配が現れた事といい、痕跡を隠蔽する能力でも?」
難しい顔をして思考に耽る彼女は発見がもう少し早ければ、と後悔した。もう少し早ければ、あるいは会えたかもしれなかったのに。東京で神力を感じたからと、その近辺のみを探索していたのが裏目にでたか。
「ですが、これでようやく見つからなかった理由がわかりました」
限りなくゼロに近い気配を察知し周囲の状況を調べ上げる。全ては求敗の極地にまで至った彼女の執念の賜物だ。本来、手段を選ばなければ捜索は容易だっただろう。既に見つけていたかもしれない。しかし、彼女の矜持が、舎弟達を総動員して”彼”を探すことを許さない。これは彼女が独力で見つけることに意味があるのだ。有象無象を使うことなど、天が許したとしても己が許すわけにはいかない。それでは「自分一人では見つけることが出来なかった」と”彼”に伝えるも同然の行いではないか。それは挑む前に敗北しているも同義であると、彼女は思う。
「まもなく、ですね」
思い返すは彼女が幼い頃の、遥かな記憶。
「必ず――」
着実に絞り込めている、その確信と共に彼女はこの場から現世に戻る。いつものように分身では無く彼女自身が来ている、という異常事態。???それは、これが彼女にとって重要事態である、ということを示していることに他ならない。
「次こそは、必ず」
その
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