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魔王の友を持つ魔王
§25 とある富豪な魔王陛下
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ころを歩き、人の出入りの激しい店に入る。仮に、護堂のように優れた容姿を持っていたのなら、受けるのは嫉妬の視線くらいだろう。もしかしたら変なのに絡まれるかもしれないけどそれほど多くは無いだろう。だが、現実は非常だ。黎斗は決してイケメンと呼ばれる部類の存在ではない。黎斗より容姿の良い男などこの世にはごまんといる。

「……」

 想像してみる。自分より容姿の劣る者が美少女を侍らしていたら。嫉妬の視線は当たり前。変なのに絡まれる確率も先程とは比べ物にならないだろう。それどころか、自分に自信のある者達がナンパを仕掛けてくることもありえる。ファミレスなどで少し席を離した隙に黎斗の席が奪われている可能性だって決してゼロではないのだ。
 もし、黎斗の居ない内に過激な行為をしてくる男がいたら。今の恵那は謹慎中なのだ。暴力沙汰がマズイことは考えなくてもわかる。エルは戦力になりはしない。それどころか機動力すらない彼女がいる以上逃亡という選択肢も採ることは叶わない。二人に出来ることは耐えて黎斗を待つことか実力行使か。今、他の魔術組織が多くの人員を派遣しているであろう地域(ココ)でなら、その有り得ない仮定も本当に有り得ないかはわからない。策謀に巻き込まれる可能性だってあるのだ。ただでさえ正史編纂委員会は混乱から完全に復旧していないのにここでやらかされたら国内にも関わらず諸外国の機関が幅を利かせることになりかねない。東京の、日本の勢力図が激変してしまう。

(確かに、日本の平和がゆきっちゃん一人で買えるなら安いもんだ)

 黎斗のぶっ飛んだ考えが、エルに理解される筈もない。

(い、いやマスター、そこまでは無いと思いますよ……)

 呆れたというか引いているというか。渇いた声を返してくるエルは危機感が足りないと思うのだけれど。

「ま、マスターのお好きなようにどうぞ」

 とうとうエルも匙を投げた。頭の悪い想像を主がしていることを即座に察する辺り、付き合いの長さは伊達ではない。黎斗の思考の全てを把握することは出来なくても、どうせロクな事を考えているはずがないという奇妙な信頼のおかげで、彼女は真実に限りなく近い推測をすることに成功する。だが彼女が黙ってしまったことで、高級料理店に学生のみで行くのは目立つ、という意見を出せる存在は消滅してしまった。

「うし、高級料理店か。……蟹料理?」

 蟹。高級料理食材筆頭といえば蟹である。ツバメの巣とか世界三大珍味が筆頭なのかもしれないが、おそらく黎斗の庶民舌では違いを理解することは難しいだろう。スーパーの安売り牛肉と高級松坂牛の違いすら曖昧なのだから。そもそもそんな”超”高級食材が周辺地域(ここらへん)にあるとは思えない。蟹がそもそもあるかどうかも怪しいところはあるのだけれど。

「蟹かー。恵那
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