第二部
第一章 〜暗雲〜
九十三 〜謎の少女〜
[4/7]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
いえ」
「では、下がって良い」
「ははっ!」
兵が出て行くと、全員の視線が私に集まった。
「……あの、ご主人様。村を襲っているのは、まさか……」
「……私も、そうは思いたくありませんが」
「でも、たぶんお兄さんの想像している事と、風が思い浮かべた事は同じだと思うのですよ」
三人の反応で、皆も気付いたようだ。
……いや、鈴々だけは首を傾げているか。
「馬鹿な! 月が庶人に危害を加えるような筈がない!」
「いえ、殿下。月殿の指示ではなく、恐らくは李カク、郭シが率いる兵の一部が暴走したものかと」
「じゃが、徐晃。内情はいざ知らず、世間では全て董卓の指示と受け止めるであろう」
「……いずれにせよ、看過する訳には行きますまい。殿、出陣の下知を」
彩だけではなく、愛紗も紫苑も頷く。
確かに、黙って見過ごす訳にはいかぬ。
……だが。
「奴らの目的は、一体何であろうか?」
「目的? 決まっているであろう、月の悪名を広める事で、奴らの御輿として月を祭り上げるという魂胆ではないか」
吐き捨てるように言う協皇子。
「確かに、それもありましょう。ですが、それだけでしょうか?」
「では、何だと言うのだ?」
「わかりませぬ。ただ、隠された目的がある事だけは間違いありませぬ」
「……何故、そうも断言できるのだ?」
「勘、とでも申しましょうか。僭越ながら、殿下よりも拙者は数々の謀略を目の当たりにしております故」
「そうか。だが、このままでは庶人の苦難が増すばかり。何とかならぬのか?」
「いえ、速やかに鎮圧に向かいまする。彩、騎兵の中から精鋭五百を選抜しておけ。紫苑、同様に弓兵から五百を」
「はっ!」
「御意ですわ」
「ではご主人様。お二方にお任せするという事でしょうか?」
「いや、私が率いる事にする。皆は留守を頼む」
即座に、各々が止めようとする。
が、私も引き下がるつもりはない。
「皆、私の身を案じての事であろうが、心配は要らぬ。私なりに考えての事だ」
「大丈夫だ。殿の身は、全力でお守りする」
「ええ。歳三様を妨げるような真似はさせないわ」
彩も紫苑も、誰もが認める実力者だ。
私だけでも危険はないであろうが、皆に要らぬ心配をかけても仕方あるまい。
「愛紗と稟は留守を頼む。鈴々は、殿下と盧植殿をお守りせよ」
「御意!」
「はい」
「応なのだ」
どうせなら、もう一つ手を打っておくか。
「彩、紫苑。兵らにこれを用意させよ」
二人は驚いた、当然であるが。
僅か四半刻で準備を整え、一千の兵が陣を出た。
最も近い村までは、指呼の距離である。
「土方様、あれを!」
「火の手が上がっているようだな」
「何と言う真似を!」
「許せないわね」
二人のみならず、兵全員が怒りに
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ