第二部
第一章 〜暗雲〜
九十三 〜謎の少女〜
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したる兵も置かれておらず、一気に洛陽に入ったようです。その後、月殿の名で挙兵が広められたとの由」
「あまりにも手際が良すぎますわ。全て、予定されていた事としか思えません」
「紫苑さんの仰る通り、この挙兵まで全て織り込み済みだと思います。善悪はともかく、戦略としては壮大なものですね」
「雛里、感心している場合ではありませんよ。……殿下、今後は我らに一任していただけませんでしょうか?」
「無論だ、郭嘉。今の私には何の力もない、お前達が頼りなのだ……頼む」
ほう、率直に頭を下げるか。
くだらぬ誇りなどには固執せぬ……王者たる素養はあるようだな。
だが、最早この王朝は救えまい。
此度の事を収めたとしても、このような事態になる時点で権威の失墜は誰の目にも明らかだ。
私や月には取って代わる気などないが、他の者は果たしてどうであろうか?
……生まれてくる時代が悪かった、そうとしか言えぬな。
「疾風。出来れば月や白兎ら、せめて何進殿とは連絡を取りたいのだが」
「……はい。警戒が殊の外厳重なのですが、何とかやってみます」
「頼む。星も手を貸してやってくれ」
「お任せを」
「風。此度の事、霞や恋らもいずれ知る事になるであろうが、月の危機とあれば黙っている筈がない。どう動かすかだが……」
「はいー。ただ、迂闊に動けば月ちゃんの立場がますます危うくなりますから。特に心配なのは恋ちゃん達ですね」
「確かに。ねねも抑え役としては不向きです、それどころか煽り立てる事も考えられますし」
腕組みをする稟。
「とにかく、軽挙妄動は慎むよう釘を刺しておくべきだな。急ぎ、二人に使者を」
「御意ですよー」
「御意」
さて、後打つべき手はないか。
「も、申し上げます!」
息を切らせながら、兵が駆け込んできた。
「何事だ! 軍議中だぞ」
「も、申し訳ありません」
「愛紗、火急の用件のようだぞ。話を聞いてから怒鳴っても良かろう」
「う……」
彩に諭され、愛紗は顔を赤くして黙り込む。
「構わぬ、申せ」
「はっ! 洛陽城外の村が、襲われているとの知らせが」
「な、何じゃと!」
盧植が血相を変えて兵に詰め寄る。
「落ち着いて下さい、盧植様」
「し、しかしだな黄忠殿」
「構いません。続けて下さい」
柔和な紫苑の物言いに、兵も落ち着きを取り戻したようだ。
「いずれも二、三百程度のようですが、食糧や秣が奪われ、逆らう者は殺されているとの事です」
「それで、何処の賊の仕業なのだ?」
「そ、それが……」
奥歯に物が挟まったかのような物言いだな。
……なるほど、そう言う事か。
「襲っているのは賊に非ず。軍の仕業、そうだな?」
「……は。しかし、よくおわかりで」
「消去法で申したまでの事。他に報告は?」
「
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