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至誠一貫
第二部
第一章 〜暗雲〜
九十三 〜謎の少女〜
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、恐らくはもうお一人がおられる筈だ。お通しせよ」
「はっ!」
 すかさず、血相を変えた盧植と協皇子が飛び込んできた。
「土方! 月が挙兵したとは真か!」
「待たれよ! 如何に勅使とは申せ、無礼でござろう!」
 彩と愛紗が、二人を遮ろうとする。
「良い」
「し、しかしご主人様!」
「……盧植殿。もはや、隠す意味もござるまい」
「……然様ですな」
 盧植と協皇子は互いに頷き合う。
「私は劉協だ。故あって、名乗りを上げなかった事、許せ」
「な……何ですと!」
 星と風、稟、疾風以外の者は、程度の差こそあれど皆が驚く。
「にゃ? お姉ちゃん、誰なのだ?」
「こ、これ鈴々! この御方は協皇子にあらせられるぞ!」
「良いのだ、関羽、張飛。それよりも土方、真なのだな?」
「はい。詳細はまだにござりますが、挙兵そのものは間違いないようでござる」
「何とした事だ……」
 協皇子は、肩を落として項垂れた。
「土方殿。陛下はご無事なのでしょうな?」
「それも未だ。疾風、至急確かめよ」
「ははっ!」
 稟を除き、各々が天幕を出て行った。
「私はどうすれば良い。姉上にもしもの事があれば……」
「気を確かにお持ち下され、皇子。土方殿は頼れる御方、きっと大丈夫ですぞ」
「とにかく、微力を尽くします。お二方は、知らせが入るまでお待ち下され」
 頷くより他のない二人。
 まだ幼い協皇子には、酷な事であろうな。


 凶報が入ったとは申せ、軍を留め置く事も出来ぬ以上、進軍は続く。
 洛陽に迫るにつれ、次々に情報が集まってきた。
 旗こそ月の物だが、兵は雛里が申していた通り、大半が雍州で去った者らのようだ。
 それを率いるのは、李カクと郭シ。
「二人とも、月殿のかつての麾下だったようです」
「霞ちゃんが以前、涼州に行く事を不服とした一部が立ち去ったと言ってましたね。どうやら、その軍を率いているようですよー」
「しかし、疾風、風。月殿にそのような麾下がいたとは聞いた事がないぞ?」
「彩ちゃんがそう思うのは当然ですよ。軍の指揮はそこそこ出来るようですが、粗暴なので詠ちゃんに嫌われていたという話なのですよ」
「ふむ、元々冷遇されていたという訳か。……だが、その程度の地位しかない者が、この規模の軍を率いているというのがわからぬな」
「ええ、星の言う通りです。黒幕は別にいるとして、何者かが知恵を授けている……そう見るべきでしょう」
 覆面の軍師、蔡和が申していた輩だな。
 それが馬謖ではないと判明したものの、その素性は未だにわからぬ。
「月様の麾下で、詠とねね以外に軍師たる資質を持つ者がいたかどうか……か」
「思い当たらないのだ……」
「わからぬものは仕方あるまい。それで疾風、李カクらの動きは?」
「は。弘農には然
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