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八条学園騒動記
第十三話 オフレコその二
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「仕方ないって言えば仕方ないけれどね」
「それにしても」
 二人は今度は彰子に顔を向けてきた。
「やっぱり大きいわね、彰子ちゃんは」
「そこは凄いわ」
「えっ、私が?」
 本人はそれを言われてきょとんとした顔になった。
「そうかなあ」
「そうよ」
「器があるわ」
「ううん」
 自分ではわからないものである。その日の放課後バレエ部の稽古場では一人の少女がジャージ姿で一人柔軟に励んでいた。
「いつもながら凄いわね」
「そうよね」
 床の上でまるでヨガの様に身体を曲げるその少女を見て周りの部員達が言う。
「あの身体の柔らかさ」
「やっぱりね。毎日してるかしら」
「私だって毎日してるわよ」
 部員の一人がここで言う。
「本当に毎日」
「あんたは部活に入ってからでしょう?」
「ええ、まあ」
 その部員は答えた。
「じゃあまだまだよ」
「だってカトリは子供の頃からだったのよ」
「子供の頃から」
 これはかなり驚くべきことであった。
「やっていたっていうの?」
「柔軟だけじゃなくてね」
「バレエそのものも」
「そうなの。ものが違うってことかしら」
「そういうことね」
「だってロシア人よ」
「ロシア」
 この時代でもロシアといえばバレエ、フィギュアスケートである。そうした意味でカトリは非常にロシア人らしいと言えた。その容姿も実にロシアらしい。
「そう言われれば納得かしら」
「そうね。ただ」
「ただ?」
「カトリを狙ってる奴がねえ。最近」
「いるのよ」
「ああ、わかったわ」
 部員達はそれが誰かすぐにわかった。
「同じクラスのフックね。あいつは」
「いや、あいつじゃないのよ」
「じゃあ誰?」
「ジョルジュよ」
「あの自称現在のロバート=キャパが!?」
「すっごいキャパに失礼な自称よね」
「全く」
 これは同感であった。ジョルジュと言えば天才的盗撮男として知られているのだ。本人の自称と女の子達の評判が見事なまでにかけ離れてしまっていた。
「それでカトリを盗撮しようとしてるの?」
「そうらしいのよ」
「司令塔は誰?マルティ?」
「そうでしょうね」
 マルティのスケベへの造詣もまた有名なものになっていた。なおこの二人は実は女の子達からは評判は悪くはない。何故かというと女の子向けの仕事もしているからである。
「あいつね」
「だったら厄介ね」
「今日も来ているのかしら」
「多分」
 女子部員達は周りを警戒する。バレエといっても女だけがするとは限らないのだ。
「何処かしら」
「男に紛れ込んでたりしてね」
「あっ」
 ここで誰かが気付いた。
「あれっ」
「あっ、確かに」
「ジョルジュよ、間違いないわ」
 何と練習場にジョルジュが堂々と入って来たのである。
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