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ソロモン会戦記 
ソロモンの悪夢(後)
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壊されたサラミスの陰に隠れながら、必死に防戦に努めているが全滅するのは時間の問題であろう。その横ではサラミス型をさらに一隻葬ったケリィのビグロが残る一隻のサラミスに対しは機動戦闘を仕掛けていた。
サラミスにまともに応戦できる対空火器は最早無く、僅かばかり残った主砲が必死の抵抗を試みてはいるが、その主砲の死角とも言うべき上方向からの攻撃に対しては成す術も無い現状となっていた。

「勝ったな」

丁度ガトーの横を駆け抜けて行ったケリィのビグロから簡単な言葉で通信が入る。
今まさに敵艦対して攻撃を仕掛けているパイロットが、通信を送れる程ガトー達には余裕があった。

「ああ。腐った連邦など矢張我々の敵では無かったと言う事だ」

 大破したサラミス型の巨大な艦体に隠れる敵のモビルスーツに照準を付けたままガトーは答える。
機体の振動で小刻みに動く照準を修正しつつ、敵機がいる座標を少し避けた位置を目標にライフルで打ち抜く。
ライフルの着弾に驚き、身を潜めていた場所から慌てる様に飛び出したジムは僅かに遅れて発射された二発目の直撃を受け刹那の沈黙の後、中のパイロットと共に宇宙の塵となった。
動力部たる核融合炉への直撃だった為そ、の死骸は肉片の一つ血の一滴すら残さずに消滅したであろう

 時を同じくし、てケリィの対峙していたサラミスにも最後の時が来ていた。艦体の各所には攻撃で生じた火球が見える。既に動く物は無くその様は古の伝承に出てくる幽霊船に態をなしている様だ。
既に指揮官は艦の廃棄を決めたのであろう艦体後方からは脱出用とおぼしき内火艇が出ている。
その敗残兵の集団に一機のモビルスーツが攻撃を仕掛けようとしていた。カリウスのリックドムだ

「辞めろカリウス!敗残兵に手をかける必要はない。」

「しかし大尉。連邦など生かしておいては・・・」

「このアナベル・ガトーを卑怯者と呼ばせたいのか!連邦憎しと言えど戦士が戦うのは戦場でのみ。戦いに破れ、逃げて行く者に追い打ちを架けるなど、私の矜持にかけて断じて認めん。引け!」

 ガトーの怒号を浴びカリウスのリックドムは引いて行く。
カリウスに悪気が無いのはガトーとて分かっている。
初陣で高揚した気持ちがより一層の戦果拡張に走らせたけだ。新兵にはよくある事で自分にも身に覚えが無い訳でもない

 だがガトーは思う。戦いの中で死んでいくのは仕方ない。戦士である以上敵にも覚悟はあろう。だが殺し殺させるのは戦場だけでは十分では無いか。
討たれたから討って、討ったから討たれる。それを繰り返していては憎しみの連鎖が続くだけだ。今次大戦の目的は、スペースノイドの自治権拡大であるが其れさえ果たせるなら無用の憎しみは買うべきではないと思う。
戦いは大儀があるからこそ崇高で尊い。総力戦の態をなし
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