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八条学園騒動記
第十一話 放浪者その四
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「早く入れ。いいな」
「わかりました」
「ホワイ君の居眠りか?」
「ええ、まあ」
「ちょっと中庭で」
「まあ授業中に寝ていないからいいけれどな」
 先生は二人の言葉を聞いてそう笑った。
「じゃあ早速はじめるからな。入れ」
「はい」
 こうしてまずは授業を受けた。そのすぐ後の休み時間である。
「ちょっとギルバート」
 アンが授業が終わるとすぐにわざわざギルバートの席にまでやって来た。
「どうしたんだ?」
「さっきのことだけれど」
「さっきの!?」
「前の休み時間のことよ」
 何かキッとした顔で彼に言う。
「前の休み時間・・・・・・ネロのことかい?」
「違うわよ」
 何故かそれではないらしい。すぐに否定した。
「あの時私言ったでしょ」
「ええと」
「忘れたっていうの?あの時のことを」
「何を言っているんだ、君は」
「何よ、折角あの時言ってあげたのに」
「ああ、あの時」
 ギルバートもやっとわかった。
「いい、言ってあげてるだけ感謝しなさいよ」
 顔を前に突き出して言う。
「クラスメイトだし学級委員だからなのよ。そうじゃないと」
「そうなのか。有り難う」
「言ったりしないんだから。感謝するのね」
「ええ、アン」
 すぐにジュリアが慌てて出て来た。
「さっきの続きだけれどさ」
「続きって私はまだ」
「いいからさ。ちょっと来てよ」
 引き摺るようにしてアンを教室の外へ連れて行く。普段の冷静さは何処へやら、である。
「ねえ」
 アロアはそんなアンを見てからネロに声をかけた。
「ギルバートのことってもしかして」
「わかった?まあつっかかってるようにしか見えないよね、普通は」
「ギルバートを何かとからかっているんだと思っていたけれど」
「こうして見るとかわかるだろ?」
「ええ、よくね」
 アロアにもそれはよくわかった。
「そうなの。アンってギルバートのことが」
「あれで案外純情だからね。素直じゃないんだよ」
「そうみたいね」
「わかったよね、これで」
「よくね」
 答えるその顔は驚きが隠せないものだった。
「しかしまさかね」
「僕だって最初驚いたよ」
「そうよね。私だって今そうだし」
「けれどこれからあの二人面白そうだよ」
「特にアンがね」
「ふふふ」
「まあ気付かないふりしてあげましょう」
 人をからかうようなアロアではない。ここは動かなかった。
「暖かく見守るってことで」
「生暖かくじゃなくて?」
「そういうの私の趣味じゃないし」
「優しいね」
「だからあんたをいつも迎えに来てるんでしょ」
 そう言葉を返した。
「違うかしら」
「言われてみれば」
「そういうことよ。わかったわね」
「うん」
 少なくともこの二人はうまくいっている
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