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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
手にする資格 ─イレギュラー─
[9/11]

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のものだろう。

 声がした方向、俺と凛が見つめる方へと士郎も目を向けた。

 空には白く輝く月。
 その月明かりが作り出す影は、まるでこの辺り一帯を影絵のように切り出してみせている。

 その蜃気楼の悪夢のような空間にあってなお異様な存在があった。

「バーサーカー」
「……へえ。アレもサーヴァントか、やっぱり」

 初めて見た黒いサーヴァント、フェンサー、アーチャー、セイバー、それら全てを凌ぐ異質の巨人。

 彼らと同じ存在とは思えないほどに、あのサーヴァントは度外れている。

 その化け物を背に従え、無邪気な声質で微笑みながら、白い少女は俺たちに敵意を向けていた。

「──驚いた。単純な能力だけならセイバー以上じゃない、アレ」

 凛が呟く間にも、臨戦態勢へと入る。

 ラインを全開にし、魔術回路から共振させて増幅した魔力をフェンサーへ送達する。
 本来の存在維持に必要な魔力の数倍、その過剰ともいえる魔力供給に、フェンサーの基本能力値が底上げされる。

 今日一日でそれなりの魔力消費をしたし、精神も疲弊しているが、メインだけでなくサブの回路も総動員して俺は強く意識を研ぎ澄ます。

 この状態、いつ戦闘に入ってもおかしくない。

 凛の傍からアーチャーの気配が消えた。
 恐らくアーチャーという名が示すとおり、本来の戦い方である遠距離狙撃を元に戦術を組み立てる気だろう。

 ならば前衛はセイバーに任せるか。

 俺は未だに、フェンサーの能力についてその多くを知らない。
 彼女に任せてしまってもいいが、それで士郎や凛に余計な情報を与えては後々に厄介なことになる可能性がある。

(フェンサー、前衛よりの中距離支援、いけるか?)
(それがマスターのご命令とあらば)

 よし、ならこちらの方針はそれで行こう。

「────衛宮君。逃げるかどうかは貴方の自由よ……けど、出来るならなんとか逃げなさい」
「まぁ、攻撃範囲内に居られても迷惑だしな。セイバーに指示できる距離内で待機してるこった」
「相談は済んだ? なら、始めちゃっていい?」

 軽やかな笑い声。
 少女は行儀良くスカートの裾を持ち上げて、とんでもなくこの場に不釣合いなお辞儀をする。

「はじめまして、リン。私はイリヤ。
 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンって言えばわかるでしょ?」
「アインツベルン────」

 …………確かフォン・アインツベルンの家系といえば、1000年にも及ぶ歴史を誇る魔術師貴族の大家だ。
 一族の情報は外に漏れることなく、時計塔ですらその存在の詳細を知ることの出来る資料はほとんどないといわれている。

「お兄ちゃんとリンは知ってるけど……そっちの人は?」
「……お目
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