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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
手にする資格 ─イレギュラー─
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ーへの問いは同時に、自己に対する問いでもあった。
聖杯戦争に参加するマスターは、各々の理由と覚悟を胸に秘めているはずだ。
凛とて聖杯が欲しくてこの戦いに身を投じるわけではないだろう。ならばそれとは別に、命を賭けて戦うに値する何かを持っているのだ。
そしてそれは、他6人のマスターも同じこと。
ならば俺の聖杯戦争に参加する理由……ただ戦いたいからという手段と目的が入れ替わったような動機が、不純なものに思えてならなかった。
先ほどまでの俺の考えも、ラインを通じてある程度伝わっているだろう。
ならばこそ、自分のパートナーとなる少女に己の価値を問いたいと思ったのだ。
「……マスターがね、どういうつもりで私をフェンサーと呼ぶことにしたのかはわからないけれど」
「?」
「
戦士
(
フェンサー
)
の
主人
(
マスター
)
が
戦う者
(
フェンサー
)
であることは、そんなにおかしなことかしら」
「…………そうか」
その答えで、胸の内にある靄が晴れた。
彼女をフェンサーと呼んだ理由。クラスが分からないだとか、象徴となる武器が分からない等といったモノではなく。
彼女にとって、自身の誇りを預ける対象が剣や弓や槍などの武器ではなく、自身の戦う意志そのものにあると感じ取れたから。
「サーヴァントっていうのはね。触媒の関係もあるけど、大抵は相性の問題から似たもの同士が呼ばれるものなの」
「呼び出されたサーヴァントが相性劣悪な相手じゃ、聖杯戦争では不利になるからか」
「ええ。ランダムで呼び出すよりは、自身と相性の好い相手を引き当てられるよう、最初にこのシステムを組んだ者がそうしたんでしょうね。
そうすれば少なくとも、自分が不利になる状況は確実に避けられる。効率の問題……魔術師が考えそうなことよね」
つまり、俺とフェンサーの相性自体はそんなに悪いものではない。
本来なら令呪がない時点でマスター失格と思われそうなものだが、それでも彼女は俺をマスターと認識してくれている。
この現世に留まるための媒体というだけでなく、俺に呼び出されたことには意味があるし、マスターが俺であることにも理由がある。
ただそれが、俺たちの与り知らぬモノであるというだけで。
「それにね。私とマスターの関係はまだ始まってもいない。ここで正式にマスターだと認められたのなら、ようやく私たちの聖杯戦争が始まるのよ」
「ああ……そのスタートラインに立つ為に、ここに来たんだ」
そうして幾らかの時間が過ぎた頃。
教会の扉を開き、士郎が戻ってきた。
「よう。どうだった、士郎?」
本当は聞くまでもないことだった。
教会から出てきた士郎の目は、別人のようにその色を変えていた。
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