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魔王の友を持つ魔王
§23 叢雲古老恵那委員会、あとしまつ
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 実は黎斗、死屍累々な戦場に長時間残って死体漁りをやっていた。黎斗の独自(オリジナル)魔術、死体放置(デッドキープ)。死後即座に消滅する神祖や精霊の死体を現世に留めておく秘法。ルーン魔術の一つ、死人の呪法が原型を留めないくらい黎斗によって魔改造された結果出来上がったこの呪術、出来あがったのはいわば偶然の産物だ。
 絹の道(シルクロード)を横断していた頃の彼には地盤が無い。襲われ続けていればいずれ武器がなくなる。糸だけではいずれ限界が来る。戦闘の気配そのものは流浪の守護で気配を遮断し回避出来るが厄介事に自ら首を突っ込むこともあるわけで。初期装備の剣(サリエルとバラキエルのかたみ)ばかり使っていて壊したら洒落にならない。黎斗には武具を作れないし作れる人に師事したこともない。だから、彼は考えた。『武器を作れないなら、(もら)っちゃえば良いじゃない』結果として滅茶苦茶な方針に達した彼は戦うことになる相手の武器に目をつけた。
 敵から武器を回収すれば何も問題は無い。だが敵はすぐに消滅してしまい、一人ならいざ知らず複数からの回収は困難を極める。ならばどうするか。消滅させなければ良い。敵を倒す度に実験を繰り返し、数十数百の試行錯誤の末完成させたこの呪法は敵を倒す直前にある呪印をした物で貫くことで消滅を防ぐ代物だ。おかげで黎斗は格こそ決して高くないものの大量の魔術武器を保有していたりする。
 入手したものは影に収納。影は自分と異界を繋ぐ(ゲート)。繋がる先は倉庫だ。最初は、星幽界の森林の中に黎斗が苦労して作ったほったて小屋だった。流浪の守護による大結界を敷いている為呪力探知などによる発覚の危険性はまずないのだが、散歩の最中に誰かにバレないか、というのが黎斗の悩みのタネだった。だが、そんな状況も太陽神(シャマシュ)を屠った時、「どうせならコイツみたく空から下を見てみたいなぁ」などと思ったことにより一転する。邪気化(アーリマン)により夜限定の飛行能力を得ていた彼は日が暮れるや否や上空に飛翔、ほったて小屋を星幽界の遥か上空へと動かした。人工衛星と同じ要領で星幽界の上空をぐるんぐるん回っているほったて小屋の完成である。あとは簡単だった。膨大な年月をかけ内装を豪華に、防衛術を強固に。今では周囲に茂る数多の植物が、少名毘古那神の加護を受け強力な守衛(ガーディアン)と化している。もっとも、場所が場所なので見つかることはないだろう。これまでも、これからも。
 兎に角、黎斗は集団を始末するとき、ワイヤーにこの呪印をしておいたのだ。凄まじい量の遺体が残ってしまったためその処理をしていて恵那や護堂と幽世で合流できなかったのだからやはり自業自得ではあるが。倒した後探索している最中に死体漁りを思い出して戻ってきた彼の表情はとても情けないものだった。

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