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魔王の友を持つ魔王
§22 染井吉野が鳴く頃に
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ないで猫を被っていた甲斐があったというものだ。彼と互角なのはまぐれだった、と各組織が納得してくれていれば最高なのだけれど。

「だいじょーぶだいじょーぶ。護堂が復活するまでの時間稼ぎだからさ。僕だって天叢雲(バケモノ)に勝とうとは考えていないよ」

 そう言って黎斗は気楽に走り出す。三人が呼び止める間もなく、あっという間に巨人へ肉薄する。直後、巨人の動きが停止した。動こうとしているのはわかるのだが、不吉な音と微弱な振動しかしていない。何が起こっているかわからないまま見ていると、巨人の装甲に罅が入り亀裂が入り始める。

「え……?」

「嘘……」

 眼前の光景を信じられず停止する周囲を余所に、恵那は一人納得する。

「あー、れーとさんお得意のワイヤーか。れーとさんって縛るの大好きだからなぁ。……恵那も何回縛られたことか」

 遠い目で語る恵那と、愕然とする護堂。

「黎斗は清秋院(オンナノコ)相手に一体何やってんだよ!?」

 護堂が叫んだ直後、人影が一つ、空を舞った。ぽーん、とでも擬音がつきそうな光景。

「おわあぁぁー……」

 マヌケな声と共に飛んでいくのは、さっきまでワイヤーで巨人と張り合っていた少年。

「「あ……」」

「れーとさん……格好悪っ……」

 呆気にとられる二人と呆れる恵那。

「あーあ。あとでれーとさん拾いに行かなきゃ…… あのままだと絶対ロクな事にならないし」

(あれが……本当に俺と同じ神殺し?)

 ため息をつく恵那と疑問を浮かべる護堂だが、叢雲がこちらへ動くのを再開させたことで束の間の休憩(インターバル)は終わりを告げる。黎斗が来たことで霧散した緊張感が戻ってくる。

「……身体が動く。黎斗のやつ、一体何を飲ませたんだ?」

 依然として身体に違和感こそあるものの、激痛はほとんど消えている。彼が何をしでかしたのかわからない。が、そんなことを詮索していられるほどの暇はない。やるべきことは巨人の撃破。謎液のおかげで体調が悪くない今なら???あのデカブツを倒せる

「背を砕き、骨、髪、脳髄を抉り出せ!!」

 大地を踏みしめて唱えるのは異界より強大な獣を呼び出す術。千鳥ヶ淵に、黒き猪が降臨する。

 猪による蹂躙劇が開幕する数秒前の出来事だった。この直後、一方的な虐殺劇が開幕する。
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