§22 染井吉野が鳴く頃に
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祐理の宣言と同時に、三人の前に影が飛び出す。更なる敵か、と身構えた彼らは意外な人物にらしくない声を揃って上げた。
「黎斗さん!?」
「れーとさん!?」
「……黎、斗?」
護堂の目に潜む困惑の僅かな感情。それに黎斗は気付かない。
「護堂、居候が迷惑掛けた。ごめん。恵那、あとで説教だからね。ったく……」
事態についていけていない三人を無視して黎斗はペットボトルの蓋をあけ、そのまま中身を護堂にぶっかける。
「わぶ!?」
「黎斗さん!? いきなり何をなさるのですか!?」
「そうだよれーとさん!! 今はそんなふざけてる時じゃないって!」
巫女媛二人から責められるが、黎斗はどこ吹く風でかけ続ける。行動できない護堂にそれを回避する術は無い。
「……マスター、護堂様はマスターと違うのですから、経口摂取にしなければ無意味ですよ? カンピオーネの方々は超絶耐性を持たれていますから」
唯一事情を理解しているエルが黎斗に言う。案の定、黎斗はすっかり忘れていた。自分が効くのだから護堂も効くと思っていたのだ。
「……あ、そっか。悪ぃ護堂、すっかり忘れてたわ。一応予備が……っと、あったあった。ほら護堂、飲め」
「はぁお前何言って……むぐっ」
もう一本を無理矢理飲ませる。味がマズイがそれは勘弁願おう。良薬口に苦し。少名毘古那神の権能で作った温泉だ。温泉水に味なんか関係ない。治療主体の能力ではない為これで完全な治癒、とまではいかないが”鳳”の代償を軽くする程度ならなんとかなる筈。
「さて、と。これで護堂は幾分マシだと思う。んで、僕がとりあえず挑んでみるわ」
「えぇ!? そんな、れーとさんムチャクチャだよ!! いくられーとさんが強くても、天叢雲はもっとムチャクチャなんだよ!?」
「そうですよ黎斗さん!! いくら”剣の王”と張り合えたとはいえ、ただの人間が勝てるような存在じゃありませんよ。神降ろしをした恵那さんでもわからないのに……!!」
慌てる少女たちに内心苦笑い。心配してくれることへの感謝と、実際は余裕な事の落差に。もちろん巨人を倒す気はない。今回はあくまで足止め要員だ。ここで巨人に勝ってしまうと更に各組織から警戒されかねない。適度に善戦して、敗北。護堂にあとは丸投げだ。二人の言い分だとどうやら自分はまだ聖騎士以上とは見られていないらしい。そこは嬉しい誤算だ。それならば、自分への警戒はそれほど多くは無いだろう。
しかしこんな気苦労をするくらいなら本当、魔王相手に適度に負けるべきだった。なまじっか引き分けたばっかりに聖騎士に準ずる槍使いとして調査されているのだから。今、聖騎士以下に見られているならそれは普段から能力を使わ
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