メディスン・メランコリー 〜無名の丘〜
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「人形のことを良く理解している存在はいないの?」
「その魔法使い以外でってこと?」
「そうよ。」
「それだと、私達の妖怪の山に元人形の神様がいるわよ?」
やっぱり!私達人形にも救いの道はあるんだ。そういうのを待っていた。元人形の神様であるなら‘人形開放’を手伝ってくれるに違いない。もしかすると、彼女は先陣を切って反乱運動を起こしてる最中なのかもしれない。私は掴んだのだ。この状況下で進むべき道を。まず我らが神様の事を知らなければ。
「その神様は・・・その・・・どういう活動をされてるの?」
「うーん、なんだか色んな厄を受けて、人間に害が出ないようにしてるんだっけ?」
「そうね。彼女の種族は厄神様。周りにある厄を集めて人間に被害が出ないようにしてるのよ。
確か、流し雛から神様になったのよ。
流し雛は祓い人形と同様に身の穢れを水に流して清める意味があるからなの。」
すでに人間の手に落ちている、ということなのね。人間は恐れ多くも人形の神を従わせるだけでは飽き足らず、人柱ならぬ人形柱として彼女を利用しているらしい。あまりにも残虐非道な行いに私は言葉も出なかった。進むべき道を失ってしまった。色々と考えていると、秋穣子が口を開いた。
「あれ?ここだけ鈴蘭がぐちゃぐちゃになってるよ?何で?」
「ああ、それは私が通ったから。」
なぜだろうか。そう言った時、私はなんだかもやもやしていた。この感情は知っている、これは何だか申し訳ない、というような、そんな気持ちだ。
「あらあら。ダメじゃない。ちゃんと踏まないように歩かなきゃ。」
「どうして?」
「それは・・・・あ、穣子。あなたなら元に戻せるでしょう?」
「今は秋じゃないからそんなに力は出ないけど、わかった。やってみるね!」
秋穣子が潰れてしまった鈴蘭の通り道に手をかざすと、見事に元の状態に戻った。汚れてしまっている部分は変わらないけれど、もう一度見事に咲くことが出来ていた。どうやら間違いなく神様なんだろう。疑いようがなかった。またちょっと申し訳なく思った。
そして目の前で起きていることを見ていると少しだけわくわくした。
「すごい・・・。」
思わず口に出してしまうと、彼女は得意げになっていた。
「でも、本当にすごいのはこの子達かも。
もっと生きていたいって思ってるからまた綺麗に咲くことができたんだよ。」
「綺麗・・・?生きてる・・・?」
「そう、植物だって生きているの。だから、これからも踏んで歩いてはいけないわ。すごく綺麗で・・・
それに可愛らしいわ。真っ白で小さい心を持っているみたいに。
毒はあるんだけど、ここの鈴蘭はそれほど無いわ
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