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王道を走れば:幻想にて
第四章、その5の3:青き獣
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われれば、キーラとしては困った感じの微苦笑を浮かべるより出来る事は無かった。己の父親よりも年上の男というのはキーラにとってみれば話す機会が無い、宮中重臣や或いは市井の老人らばかりであったからだ。何とも想像し難い話題であり、誤魔化すより何も無い。
 とんとんと、リタが彼女の肩を指で叩いて囁く。

「キーラ様。あの事は聞かれないのですか?」
「き、聞きたいけど、今はそうするべきじゃないでしょ?」

 あの事とは、即ちキーラが今調べている事であり、リタも協力して調査してくれているものだ。アリッサが囁きに反応した。

「なんだ?別に聞かれても困る事は無いぞ?」
「ほら、アリッサ様もそう仰られているのだから、何も遠慮する事はありませんよ」
「そ、そうかな・・・ではアリッサ様。一つお伺いしたい事があるのですけど」
「うむ。なんだ?」
「・・・これ、見覚えあります?」

 キーラが書棚から一冊の本を取り出して頁を開く。先日彼女が見つけて以来ずっと気に掛かっていた『ヴォレンドとは』という本の、骸骨を囲む宝具の絵である。キーラの綺麗な指先はその首飾りを差していた。

「・・・どうです?」
「見覚えもどうも、これはケイタク殿がつけていたアミュレットだぞ?」
「本当ですか?」
「ああ。いつだったかな・・・少なくとも聖鐘の事件が起きる前には、もう手に入れてた筈だ。・・・まぁケイタク殿が言うには、今は王女様にあげてしまったらしいけどな。指輪と代わりに」
「ゆ、指輪ですって!?」

 これまで冷静だったリタが目を見開いて声を荒げる。余りにも衝撃のある態度の変わりように、会話の流れが止まってしまう。キーラもまたショックを受けたような表情を浮かべ、信じられぬような口調で呟いた。

「二人とももうそんな仲に・・・」
「そんなって・・・どういう意味だ、リタ」
「女性が男性に指輪をあげる意味なんて決まってます!『貴方をお慕いしています』ですよ!いうなれば、王女は言下に求婚されたのです!」
「な、なんとっ!?」
「コーデリア様・・・意外と大胆な方だったのね。少し出遅れたのは否めないけど・・・まだまだ大丈夫よ」

 拳をぐっと握り締めて決意を改めるキーラ。唐突にして重大なる発言に自分が尋ねようとしたものを、すっかりと思考の脇へ除けてしまっている。それはアリッサとて同様の事態であり、焦燥の色を瞳に隠しきれないでいた。

(このままでは・・・拙いな)
「拙いとはどういう事です?」
「えっ?な、なんの事だ」
「口から出てましたけど」

 アリッサは唖然として口元を抑えかける。思考が駄々漏れとなっているなど、騎士としてあるまじき醜態であった。ましてそれが自分が恋に関心を持っていると推測されかねない発言であれば。慌てて言い訳を取り繕う。
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