第四章、その5の2:思い通りにいくものか
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ず大きく欠伸をしたと思えば、慧卓の隣にどっかりと腰を落としてしまう。そしてそのまま気楽な格好で頸を丸め、瞳を閉じてしまった。温厚な上にマイペースである。恐竜とは実際こんな性質だったのかもしれない。
「・・・勝手にしろ」
このまま寝るのだろうか。というよりも何故こいつがここにいるのであろうか。群れから離れてしまい、そのまま村の外れにあるこの水車小屋にまで辿り着いたのだろうか。それにしても自分も随分無用心である、これが近付いてくるのに全く気付かなかったなんて。
などと一人感想を内心で零していると、遠方から複数の人影が見えてきた。
(!あれだよな?)
向かってくるのは馬に乗った人影二つ、歩く人影が複数。その複数の方は何かを担いでおり、それが木の棒に括られた猪と熊であると気付くのにそう長い時間は掛からなかった。という事は、彼らがキ=ジェが言っていた息子二人とその連れであるという事だろう。
慧卓が小屋から離れ、端の傍に立って彼らを迎えた。先頭の馬に乗っている男は猛牛のような体躯をしており、馬の歩みを止めた後、ぎりぎりとした目で睨みつけてきた。
「お前はなんだ?何故人間が此処に居る?」
「御初にお目に掛かります。私はこの度王国より参りました北嶺調停団補佐役であります、ケイタク=ミジョーに御座います。ただいまこの地の領主様の御寛大と御厚意に浴しまして、館の方にて止めさせて頂いております」
「父の・・・?俺はその領主の長男、ホツだ。こっちは弟のソツ」
「初めまして、補佐役様」
後ろから優しさの塊と思えるような、ほんわかとした顔付きの青年が顔を出す。体躯もそれなりに引き締まっているが、兄より一回り小さく見えてしまう。もしかたしたら自分と同じ年齢なのかもしれない、そう思えるほどの若さが弟の方から感じられた。兄弟揃っての黒髪であり、既に毛根が死に絶えた父親と違ってなんとも希望溢れる姿であろうか。
ホツは慧卓を見下ろして露骨に鼻を鳴らす。嘲りが混じった口調は父親譲りのようである。
「ふん、いよいよ王国も末期だな。お前のようなひょろい餓鬼を騎士に据えるとは。特別武に秀でているようにも見えん。イルの奴と同じように、言を弄する者だな?」
「兄上、このようにお考えになられませんか?王国は徒な武の行使を控えているのではないかと。彼の起用は即ち王国が武によってではなく、言葉によって我等と対話するという事なのではと」
「私もそのように、調停官殿から窺っております」
「話に割り込むな!兎も角、あまり調子に乗らない事だ。貴様のような人間が居るだけでこの清らかな領地が穢れてしまう。用を終えたら早々に立ち去れ。いいな?」
兄はそう言って鼻を鳴らし、部下を引き連れて屋敷へと向かっていく。彼らが運んでいく大きな獣達は眉間に鋭い穴
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