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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
運命の夜 ─舞い降りる奇跡─
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黒装束の女の驚きはもっともだ。
傍目に見ていた俺でさえも何が起こったのかわからなかったのだから、攻撃を仕掛けた本人である彼女の困惑は俺よりも上だろう。
少女の手には、銀光。
「何か、持ってる?」
何かを覆い隠すように揺らめく光が、少女の手から伸びている。
不可視の武装を持っているのか。ならば先の一撃を防いだのはそれで?
正確なことはわからないが、未だ少女が謎に満ちた存在であることに変わりはなかった。
「その握り方……剣ですか」
「さあね、そこは想像に任せるわ。女は秘密が多いのよ」
「戯言を。ですが新たなサーヴァントが出現したのなら、今夜はここで引きましょう」
黒装束の女が離脱する。かなりの速度で駆けていく。
それに追従するように、追撃のためか銀の少女も駆けていった。
「え、ちょ、待てよ!」
公園に敷いていた防音と認識阻害の結界を解く。
こちらとしては尋常じゃないくらい消耗してるんだが、このまま放置というわけにも行かないだろう。
傷口の組織閉鎖と共に治癒魔術を掛け、追いつけるとも思えない彼女らを追いかけることにした。
「ちぇ、逃げられちゃったか」
新都から町に入ったところで、少女は黒装束の女を見失った。
純粋な素の速度で負けているため、距離を離されてから気配を断たれたのだ。
マスターも置いてきたし、どうしようかと思考する。
「……────」
(迎えに行ったほうが良いだろうか? いやしかし、自分のマスターであるならそれくらいはどうにかしてもらわないと)
「…………──」
(そうだ。むしろ迎えに来るぐらいの度量がなくてどうするのだ。仮にも自分を呼び出した魔術師なのだから、泣き言なんて聞きません)
「………………」
(そうだなー、散歩でもしてようかなー。現代の情報は刷り込まれてるし、いくつか不可思議な点はあるけど、それは今のところは保留ということで)
よし、そうと決まればその辺からぶらぶらと──────
「ぜぇ……待ち、たまえよ……ぜぇ……」
「ひゃあ!?」
後ろから肩を鷲掴みにする。
かなり前から居たのだが、息切れが激しくて声を出せなかったのだ。
少女は本当に気付いていなかったようで、可愛らしい声を上げていた。
「あ、マスター。いたの?」
「いたの、じゃねぇよ……仮にも、契約関係なら……その契約相手を、置いていく、んじゃねぇよ…………」
「だって……」
よし、だいぶ息も整ってきた。
「ところで……マスターを置いて、どこに散歩に行こうというのかね?」
「え゛?」
先ほどまで内心で考えていたであろうことを、ズバッと指摘してやる。
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