暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
運命の夜 ─舞い降りる奇跡─
[5/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
ない。
 感じられる気配からして、彼女はあの紫蛇の人型と同種の存在だ。

 概念魔術のはずが、俺は召喚術でも発動したのか?

 だが召喚術であれば、自身より下位のモノを呼び出すだけのはず。
 明らかにアレは、俺の魔術師としてのキャパシティを優に超えた存在だ。

「ねえ、貴方」
「あ、え?」
「貴方、私のマスターかしら」
「え……っと、たぶん……」
「本当に?」
「はい……おそらく……きっと……そう、だといいなぁ……なんて」

 突然襲われたあたりから蓄積していた混乱がピークに達した。
 しどろもどろな受け答えは最早謎であり、少女も要領を得ないといったふうだ。

 だってさあ、どうしろっていうの?

「ん、貴方とパスが繋がってる……選定されし者の令呪(あかし)はないみたいだけど、貴方がマスターで間違いないようね」
「あれ……ほんとだ」

 確かに彼女の言うとおり、俺と彼女との間にラインがある。

 ということはつまり、俺たちは何らかの契約関係にあるということだ。
 さっきまで俺を襲っていたヤツと彼女は同種の存在だが、彼女からは黒い方のとは違い、良くないモノの気配は微塵も感じられない。

 契約のこともあるし、状況次第では彼女は自分の味方ではないのか?

「あなたは……セイバーですか?」
「っ!?」

 黒装束の女が喋るのを初めて聞いた衝撃に息が詰まる。
 俺を襲っていたときの印象の声ではなく、見た目通りの静かな声だ。

 それに、セイバー? 聞きなれない単語だ。
 剣? 騎士? 銀の少女の正体に関するものだろうか。

「さあ、なんでしょうね」

 少女は返答を濁す。
 答えるのは不利益なことなのだろうか。

 情報整理、状況整理、色々必要なことがありすぎてついていけん。

「いいでしょう。確認するまでです」
「あら、お相手してくださるの?」

 黒装束の女がどこからか、再びあの鉄杭を取り出す。

 得物を取り出し、俺の時には一切感じなかった殺気を向けられているというのに。
 少女はいつまでも徒手空拳のまま、涼しげな顔で黒装束の女を見続けている。

 埒が明かぬと判断したか、黒装束の女は俺の時の数倍の速度で鉄杭を飛来させた。



 第三者の視点から見えているからこそ分かる。



 アレは無理だ。
 今から武器を構えるのでは遅すぎるし、素手で迎撃できるものでもない。

 全てがスローモーションになって見える。
 停滞していく時の中で、俺は串刺しになる少女の姿を幻視し、そして────

「ッ!?」
「今、何かしたかしら?」

 鉄杭が甲高い音を立てて弾かれる、その音で現実に引き戻された。

「………………」

 
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ