暁 〜小説投稿サイト〜
Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
運命の夜 ─舞い降りる奇跡─
[3/8]

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器もない状態で延々と中距離から痛めつけられるくらいなら殴り合いの方がまだマシだ。

 問題なのは、化け物じみた彼女の膂力だ。
 頭蓋を吹き飛ばしかねない威力、急所にもらえば即行動不能に陥るだろう。

 それさえも踏まえて、まだ格闘戦の方が勝機はある。

 まがりなりにも、俺は武術を修めてきた人間だ。
 どうやら彼女の格闘術は武道ではなく、本能に任せたただの暴力。

 型もなにもないその攻撃を。

 躱し、捌き、いなし、受け流す。

 時折打ち込む攻撃に怯みもしない彼女に勝機などまるで見えないが、まだ絶望し諦めるには早すぎる。
 
 逆転の布石は既に打ってある。
 最初にして最期の策は、もう少しで完成だ。
 成功確率がとんでもなく低い一か八かの賭けになるが、ここにいたってはそんな賭けも悪くない。

 どうせここを凌げなければ、俺に明日はないのだから。

 故に、あとは俺が今の状態で持ちこたえられるか。
 残った布石を打ち、策を完成させられるかに掛かっている。

(呼吸も乱さずに余裕かましやがって……)

 先ほどから続く攻防も、俺が防戦一方だ。
 それでも鉄杭攻めのときに比べれば戦闘の体裁は保っているほうで、正直遊ばれている感が否めない。

 一定のリズムで続く攻撃。

 俺がその呼吸に慣れ始めてしまった頃に、彼女の攻撃が急激に速度を上げた。
 一瞬無防備になってしまった胴体を見逃さず、蛇がその身を捻転させながら牙のような蹴りを穿つ────!

「う、ぐ!」

 刹那の判断。
 腹に強化と硬化、対物障壁に耐圧障壁を集中、さらに自ら後ろへ跳ぶことで衝撃を緩和させる。

 体勢の立て直しも体軸の制御も出来ず、背中から地面に落ちる。
 腹と背中の痛みも呼吸困難さえも無視して、俺は敵手の存在に気を配る。

「へっ……必殺の一撃が決まって浸ってんのか?」

 蹴りを放った体勢からゆっくりと身体を戻し、こちらを見据える。
 相も変わらず余裕の素振りだが、残念ながらこっちの手札は揃っちまってんだよ。

 俺は胸内から己が聖遺物、光のアミュレットを取り出した。





Blood lust(我が血を欲せ)
「ッ!?」





 奴も今までとは違う詠唱に気付くももう遅い。

 既に発動した呪血の縛鎖に囚われた彼女は、この詠唱が終わるまでは抜け出せない。
 最悪のケースはこの魔術発動時に同時発動する呪血縛鎖さえも消されることだったが、どうやらコレは無効化できなかったらしい。

 血に濡れた手でアミュレットを強く握り締め、黒守の最大魔術……聖遺物を触媒にした概念魔術の詠唱を始める。

Blood alliance(血の盟約を果たせ)
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