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Fate/stay night -the last fencer-
第一部
出会いし運命の少女
運命の夜 ─舞い降りる奇跡─
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がそんなことに頓着している余裕はない。流れるものは流れてしまえ。

 指先から光弾を放ち、闇の中で光の反射を見つけ、鉄杭の軌道を読みながら回避する。
 眼帯をしているせいで目眩ましも何もなく、どうせ無効化されるならと光弾射出の魔術を乱射した際に、偶然発見した鉄杭の回避方法だ。
 この夜闇の中では視認の難しい速度で飛んでくる鉄杭だが、あらかじめ飛んでくる方向が分かっていれば避けることは容易である。

 躱し切れないものは蹴りで攻撃を逸らす。
 靴自体に強化を施しているし、靴底に硬化も施しているため、相手の鉄杭を弾くだけならまだ保つだろう。
 一つ注意しなければならないのは、鉄杭に付随する鎖に足を絡め取られた場合、その時点で決着がついてしまうこと。

 決着とは即ち、黒守黎慈の絶命だ。

 而して、解せないのは相手の目的である。
 俺を殺すことが目的ならば、この化け物はいつでも俺を殺すことができるはずだ。
 獲物をいたぶるような真似をせず、鉄杭を飛ばしながら掴みかかるなり格闘を挑んでくるなりすれば、俺は対処し切れずに敗北する。

 いたぶることそのものが目的か?
 だがもしも狩りに愉悦を見出しているのなら、こんな無機質な表情のままで機械的に行動しているのは不可解すぎる。
 分かっているのは自分では到底敵わない化け物であり、相手がどういうつもりであっても現状での俺の生殺与奪は彼女の手にあるということだ。

「くそ、はぁっ、はぁっ…………え?」

 200手以上は凌いだだろう後、二つの牙が作り出す嵐は止んでいた。
 鉄杭が風を切る音、鎖の擦れる鈍い音がなくなり、夜の静寂が場を満たす。

 蛇が獲物をじっと観察するように、彼女は俺を見つめている。
 いや、眼帯をしているので眼は確認できないのだが、確実に彼女は俺のことを見据えていると感じ取れる。
 凡そ三十分ぶりに止まることを許された俺は、緊張感と警戒はそのままに少しずつ呼吸を整えていた。

 先ほどからの出血は酷くはないが、放置していい傷でもない。
 しかし今はまだ、血は流すままにしておく。

 またいつ動き出すか分からない。
 一挙手一投足を見逃さぬよう、俯瞰で相手を捉える。

 数分か、もしくは数十秒だったか。

 気付けば鉄杭は手元から消え、そのことに疑問を覚えた瞬間────



「がっ!?」



 ────俺は数メートル離れた場所まで蹴り飛ばされていた。

 地面を滑りながらその勢いを利用して後ろに飛び起きる。
 着地とともに前を見れば、俺を追撃せんと地を駆ける紫の大蛇。

「チィッ!!」

 怯むことなく、俺は応戦した。
 何故素手での格闘に移行したのかは知らないが、こちらにとっては好都合。
 武
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