四月期 新任大尉の着任報告
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である官房長が座長代理を務める事になった。
「その通りだ。そして――これが今の所尤も材料として使う最有力候補らしい」
そう云って堂賀首席監察官は瓦版の切り抜きと人務第二課の報告書を差し出した。
「あぁ、三月の襲撃事件ですか、確かにあれはここ最近では大規模な戦闘だった。
二万金を賭けた大一番でしたね」
大手両替商である鈴鳴屋が給与支払いの為に支店へ正貨の輸送を行っていた馬車を出発させた事が全ての始まりであった――情報を何者かが漏らしたのだ。
金を目当てに小金がばらまかれ、六十名を超える匪賊が襲撃する。それを匪賊討伐の為に派兵されていた皇州都護鎮台第三聯隊第一大隊第三中隊から井田中尉率いる小隊が急行し、交戦。小隊長の鋭剣を折れる程の悪戦を経て中隊主力の到着によって匪賊たちは降伏する。
双方と被害者を合わせて十三名死亡、二十八名負傷、十二名行方不明と莫大な犠牲者を出すが、幸いにも軍側が死人を出さず。辛うじて面目を守った形になった。
「井田中尉は確か衆民でしたからこれで受勲して大尉で昇進、退役ですかね。
退役すると云ったのならば銃兵章の他に年金付のものも一つ推薦しますか?
これだけ注目度が高いのですから、それもありかもしれませんね。
功五級でも年百八十金は給付されますからそれ以上に予算を得られれば採算があう」
皮肉をとばしてにやり、と笑う副官に堂賀は険しい顔で首を振る。
「――問題がなければそれも考えるがな、疑惑が残っていることを忘れるな。正貨が丸々四千金も消えている。鈴鳴屋は即座に資金を工面し、その後の業績も堅調そのものだ。
確かに影響は少ないが四千もの金貨が行方不明なのは変わりない」
「――四千金が致命傷にならないあたり、流石は天下の両替商閣下と云ったところですね。
向こうにとっては誤差の範囲なのでしょう」
そういって肩を竦める若い副官に堂賀は眉を顰めた
「あぁ、だがしがない軍人にとっては相当な額だぞ?兵部大臣閣下の年給並みだ。衆民なら五年は遊んで暮らせる」
「給金が安く、昇進が行き詰っている衆民中尉なら喉から手が出る程の額だとでもおっしゃるのですか?」
不快そうに眉を顰める副官に首席監察官は苦笑して頷いた。
「その疑いを払拭したいからこそ態々こちらに回されたのだろうさ。消えた金が軍人の懐に入っていたとなったら最悪の事態だが流石に官房が直々に監察をしたら引っ込みがつかなくなる――何らかの行動をせざる得なくなる」
「――我々なら単なる考課評定に必要な随時監察で済ませられますからね。問題がないのなら後は広報の仕事になる。問題があっても表面化する前にどうにでもできる」
若い副官の言に堂賀はにやり、と笑い、肩を叩いた。
「正解だ――それではこの件は我々が行うことになる」
「はい、ですが首席
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