暁 〜小説投稿サイト〜
リリカルってなんですか?
A's編
第二十七話 裏 (はやて)
[5/12]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
テイルと凛とした立ち振る舞いが特徴的なヴォルケンリッタ―が将であるシグナム。その容姿と立ち振る舞いに違わず、性格も実直そのものだった。兄というよりも、父に近いのかもしれない。将たらんと、彼女はよく子供っぽい行動をするヴィータに対して小言を言う。それに対して、ヴィータが反発し、はやてがシグナムを抑えるというのは日常だった。

 生まれて初めて得た家族は、はやてが想像していた以上に幸せなものであり、彼らのおかげではやての生活は彩りを大きく変えていた。

 朝、目が覚めたとき一人ではない。リビングの広い部屋で『おはよう』とあいさつすれば、返事が返ってくる。朝食は今まで一人だった。そのことに何も感じなかった。それが彼女にとって普通だった。しかし、四人での食事を知ってしまえば、今までの食事のなんと味気なかったことか。そのことを実感してしまう。もちろん、朝食の片付けはシャマルと一緒に。ヴィータは、はやてが買ったゲームに興味があるのか、朝食を食べて早々ゲームをはじめ、シグナムはソファーで新聞を読み始める。

 昼、全員で昼食を食べた後は、外に出る。はやて一人のときは、特に用事がなければ、外に出ることもなかったが、今はザフィーラの散歩と称して全員で出ることもある。はやての車椅子を押すのは、いつだって取り合いで、いつの間にか順番が決まっていた。はやてとしては、みんなには自由に散歩してほしいのだが、こうやって構ってもらえるのは、嬉しかった。

 夜、朝、昼と同じく全員で食べた後は、シグナムやシャマル、ヴィータと一緒にお風呂に入る。もちろん、全員一緒というのは無理だから、昼の散歩のように順番にだが。お風呂に入った後は、全員が就寝の時間だ。ヴィータとはやては一緒の布団に入って眠る。ヴィータのお気に入りの呪いウサギを間に挟んで、だが。『おやすみ』という言葉に『おやすみ』という返事がある。今までは『おやすみ』という言葉を使うこともなかった。だから、こうやって、挨拶することがくすぐったくて、何より返事があることが嬉しかった。

 はやての生活は一変した。広い一軒家に一人だけの生活から、いきなり三人と一匹も新しい家族が増えた生活へと。今までは、何をするにも一人だった。だが、今は違う。自分以外のだれかがいる。話し相手がある。肌のぬくもりが、手のぬくもりが、心のぬくもりが、そこには確かにあった。もしかしたら、それが普通だ、という人もいるかもしれない。それに慣れてしまって、それを『特別』だと感じることができない人もいるかもしれない。しかし、はやては、違う。今まで、普通だと思われることを何一つとして得ていなかったのだ。ほかの人にとっての普通が、はやてにとっては『特別』だった。

 はやてが、本の中でしか知らなかった『家族』というもの。いつだって幸せそうに描写されていた『家族
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ