A's編
第二十七話 裏 (はやて)
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「ショウくんやっ!」
急いで車椅子を回すはやて。もう、一人でいることを自覚するのは嫌だったから。帰ってきてくれたことを確認したかったから。だから、はやては急いで玄関を開ける。ドアの向こうにいたのは、はやてが期待した顔。翔太は、出ていくときは異なって、小さなバッグを持っていた。おそらく、彼が言っていたお泊りセットなのだろう。
シグナムたちとは異なり、帰ってきてくれたことに安堵するはやて。もう今日は、一人じゃない。あの寒さはない、と思うと自然と笑みがこぼれてくる。
―――ああ、そや。安心している場合じゃないんや。ちゃんと迎えてあげんとな。
そう思って、はやては笑顔のまま口を開く。
「おかえりや、ショウくん」
翔太は最初、ぽかんとしていた。どうして、応えてくれないのだろうか。迎えてくれた人に対する返事は礼儀だと思う。だから、はやては翔太が返事を返してくれないことに不満だった。しかし、はやてのふくれっ面を見て翔太も気付いたのだろう。呆然としていた顔を笑顔に変えると、はやてが期待していた言葉を口にする。
「ただいま、はやてちゃん」
本当は帰ってきてくれたことだけでも、はやては満足だった。でも、翔太はこうして、返事もしてくれた。
―――もう、独りやない。
そのことが嬉しくて、誰かがいるぬくもりを感じられることが嬉しくて、孤独でないことが嬉しくて、寂しさを感じないことが嬉しくて、はやての表情には、自然と満面の笑みが浮かぶのだった。
つづく
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