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リリカルってなんですか?
A's編
第二十七話 後
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「うん、いってきます」

 何かを考えていた様子を見せたはやてちゃんだったが、すぐに笑顔を浮かべて、僕を「いってらっしゃい」という言葉と一緒に手を振りながら僕を送り出してくれた。少し大げさだな、と僕は内心で苦笑しながら、はやてちゃんの声にこたえて、いってきます、と告げた後、八神家の外へと出るのだった。



  ◇  ◇  ◇



 八神家までの道のりを親父と一緒に歩いていた。僕の家から八神家までは、僕の足で大体十五分程度だろう。予想通りといえば、予想通りの道のりだ。その道を母さんから受け取ったお泊りセットの入ったボストンバックを片手に親父と一緒に引き返していた。

 もしも、日が暮れていなければ、僕一人でもよかったのだが、日がすっかり暮れてしまったのだ。確かに住宅街というだけあって、時間的には、人気が全くないというわけではないが、それでも心配なのだろう。母さんに言われて親父が付き添うことになったのだ。

 親父と別段仲が悪いというわけではない僕たちは、最近学校であったことや、友達と遊んだ時の面白い体験などを話しながら、ゆっくりと僕に歩調を合わせて八神家へと歩みを進める。そう、歩みを進めているつもりだった。

 僕がそれに気付いたのは、親父の一言からだった。

「なあ、翔太、俺たち、どこへ向かってるんだっけ?」

 不思議そうな顔をして僕に問いかけてくる親父。その顔は、本当に歩いている最中に目的地を忘れてしまったような表情をしている。人が突然、目的地を忘れてしまうようなことがあるだろうか。そもそも、持病を持っていれば、話は別だが、親父がそんな持病を持っているなんて聞いたことはない。

「何言ってるの? 八神はやてちゃんの家に僕を送ってくれるんでしょう?」

「ん? あ、ああ……そうだ。そういえばそうだったな」

 僕の言葉を聞いて納得した親父は、どうして忘れてたんだ? と不思議そうに首をかしげていた。

 持病も持っていない親父が健忘症のようにふるまう。そんなことがあるだろうか。物忘れが激しいというレベルではない。まるで、記憶から零れ落ちたような、そんな振る舞いだった。はたして、そんなことが考えられるだろうか。もしも、僕が平凡な人生を送っているなら考えられないだろう。明日にでも、病院へ行くことをお勧めしているだろう。

 しかし、生憎ながら齢十歳にならないというのに僕の人生はすでに平凡ではない。もっとも、それを言うならば、生まれた瞬間からというべきかもしれないが。

 ともかく、僕はこのような現象を起こせる存在を知っている。魔法というおとぎ話のような存在を。まさか、と思って周囲を注意深く探ってみれば、若干だが、微妙な違和感を感じるのは確かだ。これが魔法だと僕には断定できない。そこまで魔法
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