A's編
第二十七話 後
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、このキッチンは、はやてちゃんの車椅子に座った時の高さに合わせられている。小学生の普通でも低い身長に、さらに座った時の低さに合わせられているのだ。もしも、大人が料理するとなれば、相当に使いにくいキッチンであることだろう。
そこから導き出されることは、あまり考えたくないものだが、このキッチンで主に料理を作っているのがはやてちゃんということであろう。
ほかの家族はいったいどうしたのだろうか。いや、この家族の役割分担ということなのかもしれないが、もしも、このカレーの人数分だけ毎日料理を作るとなると結構な大仕事である。それを子供にやらせるのはいかがなものだろうか。手伝い程度ならばわかる。しかし、こうしてキッチンの高さまで調節してまで。これでは、最初から料理することを放棄しているようにとられても仕方ないのに。
「ん? どうしたんや? ショウくん。手がとまっとるで」
「あ、いや。なんでもないよ」
しかし、人様の家庭事情に僕が簡単に足を踏み込めるはずもなく、僕が考えていたことを表に出さないように曖昧に笑うしかない。しかし、はやてちゃんを誤魔化すことには成功したようで、少し怪訝には思っていただろうが、そか、と一言言うとまたサラダづくりに戻るのだった。
◇ ◇ ◇
「「ごちそうさまでした」」
僕とはやてちゃんの声が重なる。
あれから、僕たちはカレーを温めて、サラダを盛り付けて、料理を並べて少し早目の晩御飯を食べていた。用意されたお皿の数は僕たちの分も合わせて五つだ。しかし、そのうち三つは、お皿を逆にして埃をかぶらないようにしている。おそらく、後で帰ってきてもいいようにだろう。ちなみに、カレーはすでに冷蔵庫の中に保存されている。
「ふぅ、そろそろ、帰ろうかな」
食器を片づけた後、食後の一杯を口にしながら、僕はぽつりとつぶやいた。あまり遅くなるな、と釘を刺されているうえに外はすでに日が落ちてしまって真っ暗だ。今度こそ、お暇しなければならないだろう。
僕が晩御飯に誘われた時の表情を見ていると家族のだれかが帰ってくるまで一緒にいてあげたい気もするが、僕が大人ならまだしも―――それはそれで、別の問題が発生するような気もする―――今の僕は小学生だ。遅くに外は出歩けないし、親を心配させてもいけない。つまり、そろそろ帰るしかないのだ。
もちろん、それが一筋縄ではいかないことは確かだろう。僕のつぶやきを聞いたはやてちゃんの肩がビクンと動いたのを見てしまったから。
「か、帰るんか?」
「うん、そろそろ、親が心配しちゃうからね。外も暗いし……そろそろ、帰らないと」
そう言っている最中にもはやてちゃんの表情が沈んで行くのがわかる。しかし、これ以上はいることができな
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